flower


大学に入学して以来、俺の生活には花がある。
「華」じゃない。「花」だ。
その花は一輪だけそこにあった。
大層貴重で高価な花なんだそうだが、いつも固く蕾を閉ざして咲こうとしない変わった花
だ。
誰もが鮮やかに咲き誇る様を見たいと望み、あわよくば自分のものにと望む花。
見れば大勢の人間がその花を囲んで、水をまき、肥料を与え、あまつさえその姿を讃えて
美辞麗句を投げ掛け、愛でている。
それなのに。
その花は頑なに咲こうとはしない。
むしろ皆が構えば構うほど、かえって固くその蕾を閉ざしていくように見える。
そんな花の様子に、一人また一人とあきらめて去っていく。
「所詮文字通りの高嶺の花なのだ」と皆が言う。
俺には分からん。
なぜならこうだ。
取り巻く人間のいなくなったその花に俺はつと近づく。
「おい」
そしてぞんざいに呼び掛ける。
すると。
先程までの頑なさが嘘のように、たちまち花は蕾をほころばせ、色鮮やかな花弁を惜しみ
なく大きく開いて華やかに咲き誇る。
一斉に、羨望、嫉妬といった不快な視線が背中に突き刺さる。
何なんだ。
一体何なんだこの花は。
俺には花を愛でるような趣味はない。
俺は何もしていないのに、どうしてこの花は俺の前でだけこんなにも鮮やかに花開くのか。
「どうしてお前なんかが・・・」
そんな声さえも聞こえてくる。
知るかそんなこと。俺が教えて欲しいくらいだ。
蕾のままだろうが咲いていようが俺は別に花なんざどうだっていいんだよ。
ところが。
そんな俺の気持ちを他所に、何がいいのかその花は気がつくと俺の傍らで咲いている。
水をやるわけでもない。肥料を与えるわけでもない。愛でる言葉を掛けるわけでもない。
それでも。
その花は俺の隣で咲いている。
咲いたら咲いたで花弁の大きさといい色といい鬱陶しいぐらいに目立つ花だ。
事実鬱陶しい。
何度も言うが俺には花を愛でる趣味はない。
四六時中そばにあって、無視しようとしても何かにつけて視界に入ってきてしまうものだ
から目障りなことこの上ない。
おまけに馬鹿な連中からは、俺が花を独占してるような謂れのない誤解までされている。
うざい。うざ過ぎる。
どうにも我慢できなくなったある日、俺はキレた。
「何だっていっつも俺の側にいるんだ鬱陶しいんだよ。目障りだ。いい加減にしないとそ
の花びら全部むしり取っちまうぞ。それとも根こそぎ引き抜いて捨ててやろうか」
俺がそう言った途端。
あれほど瑞々しく色鮮やかに咲いていた花は、あっという間に精彩を失って、今にも枯れ
落ちんばかりに色褪せしおれてしまった。
だからどうした。別にどうだっていい。枯れるなら枯れてしまえ。
俺は花に背を向けた。
花はもう側にはこなかった。
枯れ落ちそうな様子でただそこにあった。
もう蕾もつけはしない。
もう花は咲かない。
どうしてだ。
何で俺が突き放しただけでそんな風になるんだ。
どこでだって咲けるだろう?
まるで俺が枯らしたみたいじゃないか胸くそ悪い。
風でも吹けばそのまま地面に崩れ落ちてしまいそうな哀れな姿が見ていられなくて。
多少の後ろめたさも手伝って。
俺は渋々花に向き直った。
そして。
「・・・・・・・・・・冗談だ」
と声を掛けてやって、その直後に後悔した。
一瞬のうちに花は息を吹き返した。
それはそれは活き活きと。張りのある花弁が光を照り返してキラキラと輝くほどに。
しおれかけていたのが夢か幻のようだ。
だまされたような気さえする。
その現金さは何なんだチクショウ。
あのまま枯れちまえば良かったんだ。
それから。
何度も似たようなことを繰り返して。
その度に俺は後悔して。
相変わらず花は俺の隣で咲いている。
目障りなのも相変わらずだが、人間とは慣れる生き物だということを俺は身を持って知っ
た。
綺麗かと言われれば綺麗な花だと思う。
蕾のままでも咲いていてもしおれても。
気になって鬱陶しいことに変わりないなら・・・咲いているほうがいい。
だからもういい。
勝手に咲いてろ。
その内気が向いたら。
本当に本当に気が向いたら。
たまには・・・水ぐらいくれてやることもあるかもな。




直人さんほだされまくってます。(笑)
竜也を花に例えるなんて私位なモノだろう・・・。
背景はスィートピーですが別にイメージって訳じゃないです。
竜也なら・・・蘭かな?(爆)


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