| 9月1日、キウイの日。 |
ごろごろと何かがテーブルの上に転がされる音に、直人は新聞から顔を上げた。 テーブルの上には手のひらサイズよりも若干小ぶりな茶色い楕円形の物体が6つ転がって いた。 そしてテーブルを挟んだ向かい側では、ソレを転がした張本人であろう竜也がニコニコと 笑っている。 直人は新聞を置き、そのひとつを手にとった。 「何だこれは」 「え?直人キウイ知らないの?」 「そうじゃない。これはどうしたのかと聞いてる」 「買ってきたv」 「いやだからだな・・・」 「直人、今日は9月1日だよね」 その言葉にちらりとカレンダーに目を向ける。記憶違いでなければ本日は9月1日で間違 いなかった。 「そうだがそれとこれとどんな関係が・・・」 「あー!やっぱ直人知らないんだー!」 言葉尻を遮った竜也の小馬鹿にしたような物言いに直人はムッとして眉を寄せるが、調子 付いた竜也は得意げに続けた。 「あのね直人。9月1日はキウイの日なんだよv」 9と1にかけてキュウ・イチ=キュウイ=キウイということなのだろうということはいちいち 説明されなくても聞いただけで十分分かろうというものだが、果たしてそれは何か特別な 意味を持った日なんだろうか。下手な駄洒落のようなそれを知っていたとして、はたまた 知らなかったとしてだからどうだというのか。 相も変わらずくだらない(直人的には)ことで喜んでいる竜也に、直人はわざと馬鹿にす るように大袈裟に鼻を鳴らした。 「ふん、成る程?そんなことで普段食べもしないのにわざわざ買ってきたわけか」 「何だよその言い方ー」 「つくづくメディアにのせられやすい奴だなお前は」 「悪かったねミーハーで!いいじゃん別に美味しいし!それとも直人はキウイ嫌い?」 「特に好きでも嫌いでもない」 「それなら問題ないよね。細かいことはこの際置いといて、せっかく買ってきたんだから 食べよ♪」 そう言って竜也はいそいそと皿とフルーツナイフを用意する。 何だかんだで結局は竜也のマイペースに付き合うはめになる。二人の間では既に定番化し て久しいいつものパターンに直人は小さく溜息をついた。 「はい、直人」 「・・・?これで食べるのか?」 皿と共に差し出されたのは皮付きのまま二分割にされたキウイとスプーン。それに直人は ふと首を傾げた。 考えてみればキウイなど飲食店などでデザートに添えられているものしかあまりお目にか かったことはない。だが大抵は皮を剥いて適当にスライスされていたような・・・と直人 は記憶を辿った。 直人のその様子に竜也は微笑んで言った。 「うん、スライスするのが普通かもしんないけどさ。この方が手間もかかんないし有りか なーと思って」 「まあな」 何となく納得して直人がキウイの断面にスプーンの先をつけようとしたその時。 「直人ぉ、あ〜んv」 「・・・・・」 一瞬直人は固まった。 ゆっくりと視線を上げれば雛鳥よろしく小さく口を開けた竜也の顔がある。 「・・・自分で食え」 「やだ。いーじゃない、一口だけ〜」 急かすように身を乗り出して甘える竜也に直人は心の中で舌打ちした。 これがやりたかったのか・・・と遅まきながら気がついてスプーンを持つ指先に無意識に 力がこもった。 しばしの逡巡の後、直人はスプーンでキウイの緑色の果肉を一匙すくった。 それを見て竜也は嬉しげに口を開けて目を閉じた。 と、その瞬間。後頭部をがしりと掴まれたかと思うとそのまま強引に前に引き寄せられ竜 也は仰天した。 「!!?」 目を見開いたときには竜也の唇は直人のそれで塞がれていた。 突然のテーブル越しの口づけに戸惑う間もなく、竜也の口内に直人の舌が押し込まれる。 「ん・・・っ」 差し入れられた舌の感触とともに広がる甘酸っぱい南国の果実独特の甘味と熟しきった果 肉の柔らかい食感。 「ん・・・ん・・・」 口内で果肉を押しつぶすように蠢く舌の動きに合わせていつしか竜也も舌を絡めてそれを 味わった。 ごくりと竜也の喉が鳴ったのを合図に直人はゆっくりと唇を離した。 キスの余韻にウットリとしていた竜也の目の前で直人の口端が上がりニヤリとした笑みを つくる。 竜也は一気に真っ赤になって喚いた。 「なっ何すんだよっ!!」 「食わせろというから食わせてやったんだろうが」 「違うよ俺はこんなんじゃなくって・・・ああ、もう!!」 なかば自棄気味に竜也は椅子に座りまだ赤い頬を膨らましてそっぽを向いた。 「拗ねるなよ」 「だって・・・」 「お前がイキナリわけの分からないことを強請るからだ」 「だって・・・いいなって思ったんだもん」 「何が」 竜也は下を向き、唇を尖らせながらぼそぼそと呟いた。 「キウイの棚売りコーナーでさ、ビデオ流してたんだよ宣伝用の。その中でカップルがさ、 半分こにしたキウイをお互いにスプーンで食べさせ合ってて、いいな〜って思ってそれ で・・・俺もしてみたくて・・・」 それを聞いて直人は思わず頭を抱えた。 20歳も超えた男の思考としてこれをいじらしいと思っていいものかどうか。いや一般的 にはダメだろう。 「・・・お前って奴は本当に・・・」 「のせられやすいですよ。影響されやすいですよ。どうせ俺はバカですよ」 珍しくも直人の台詞を先回りした上に自ら口にして不貞腐れる竜也に、相当にヘソを曲げ てしまったことを悟り直人は苦笑した。 「浅見」 「・・・」 「悪かったよ、ホラ」 言いながら直人はスプーンに一掬いの果肉をのせて差し出した。 「・・・」 それを前に唇を引き結んで、竜也は上目遣いに何度もスプーンと直人の顔とを交互に見つ め・・・。やがておずおずとスプーンに唇を近づけ緑色の小さな果肉を口に入れた。 「・・・美味し」 もぐもぐと口を動かしながら竜也は照れ臭そうに、けれど嬉しそうに笑った。 ついさっきまでの凹んだ顔は何処へやら。いつもながら単純に機嫌が直る竜也に「泣いた 鴉がもう笑う」とは正にこのことだなと思うと同時に、いつもながら竜也にだけは甘い自 分を自覚して直人はやれやれと肩をすくめた。 「はい直人ぉ、お返しvあ〜んv」 「いや俺は・・・」 「あ〜ん」 「・・・・・・」 ぱくり。 「えへへ。美味しい?」 「・・・・・・ああ」 「だよね〜美味しいよね〜vvv」 「おい」 「ん?」 「口移しのお返しはしてくれないのか?」 「え!?///」 9月1日の甘酸っぱい出来事でした。 |
御曹司の中の人が記念イベントにて
「お互いに食べさせ合うのってラブラブでいいですよね〜v」
などとのたまっていたのでさくっとネタにしちゃいました。(笑)
相も変わらず御曹司は乙女で滝沢さんはムッツリで
そして二人はバカップル。甘々。
キウイの食べ方として生ハムメロンのように
生ハムで巻いて食べてもいけるのでは
と言ってましたがどうなんでしょう。
微妙?