| ヤキモチ焼きの彼 |
「ねぇ直人。『松坂直人』って知ってる?」 竜也が口にしたその名前に対して珍しく引っ掛かるものを感じて直人は首を捻った。 「・・・聞いたことがあるな。芸能人か?」 知人の顔を頭に並べてみてもそれらしい覚えがないので、残る可能性としてそう言ってみ ると竜也の顔がぱっと輝いた。 「すごい!直人でも知ってるんだ!」 「『でも』とはなんだ『でも』とは」 「だって直人、テレビとかあんま興味ないじゃん」 「まあな・・・。で、誰だ?」 「格闘家だよ。あんまり強すぎて対戦相手がいなくなっちゃったせいで最近は試合とかし てないんだけどさ。格闘界では今や生ける伝説とまで言われてる最強の男なんだよ!俺も 何度か試合見たことあるけど実際凄かったんだよね〜」 自分が空手をやっていたこともあってか、竜也は熱狂的とまではいかないまでもそこそこ の格闘技ファンであった。 言われてみれば自分もそんな竜也に付き合って試合を見たことがあったようななかったよ うな・・・と、直人は曖昧な記憶を辿った。 「でね!でね!その松坂直人さんに今度うちの系列会社の新商品のイメージモデルをやっ てもらうことになってさ!俺今日本物に会っちゃったんだよ〜v」 なかば興奮気味にそう話す竜也に対して、知らなくはないという程度で顔すらおぼろげな 直人は今ひとつ話に乗り切れず、嬉しげな竜也の様子に苦笑していた。 しかしそれは続く竜也の言葉で一変した。 「それでね!それでね!実際会ってみた松坂さんってさぁ、もうすっげぇカッコイイの!」 直人の眉が一瞬ピクリと吊り上がる。 「背高くって体格よくってハンサムで声も低くて渋くてさぁ!それでもって文句なく強い なんてちょっとずるいんじゃないかって感じ!」 徐々に目が据わり表情が険しくなっていく直人にすっかり調子付いている竜也は気付かな い。 「でもちょっと無愛想で無口な人だったな〜。けどそれがまたなんていうかこうストイッ クな感じでそーゆートコちょっと・・・その・・・雰囲気直人に似てるな〜なんて思っち ゃったりして///名前も漢字まで同じだし、そう思ったら俺ってばなんか急にドキドキしちゃ ってさ〜・・・」 さらにそんなことをのたまいながら照れ臭そうに頬を染める竜也に直人は静かにキレた。 「おい」 「ん?何?」 「それは何か。お前の好みのタイプだったと言いたいのか」 「へ?」 一瞬の沈黙の後、直人は逃げるように竜也に背を向けた。 その背中に竜也は口元を弛ませた。 「直人ぉ?」 「・・・・・・」 「直人ってば」 「・・・・・・」 名前を呼びながら竜也は無言を続ける直人の側ににじり寄った。 「直人・・・もしかしてヤキモチ妬いたの?」 「・・・・・・」 「ねぇ直人ぉ」 「・・・・・・」 「ねぇ?ねぇねぇねぇ」 「・・・・・・っ!!」 直人の気も知らずにことのほか嬉しそうに、甘えるように擦り寄ってくる竜也に、我慢の 限界点を超えた直人は振り向きざま怒鳴った。 「当り前だろうがこのバカが!!」 「わぁっ!?」 そしてがばっと竜也を抱きこみ、有無を言わせず床に引き倒して組み伏せた。 一転して竜也は慌てたが、直人に眼光鋭く見据えられヒクリと引き攣った。 「お前の口から他の男を褒めちぎるような話を聞いて俺が面白いと思うか?」 「い、いやあの、あのね直人・・・っ」 「しかも何だ?ドキドキしただと?・・・許せんな・・・」 「そ、それはだからその・・・って直人?ちょ・・・落ち着こうよ!ね?」 「二度とそんな戯言が言えないように今からじっくり教えてやる。お前が誰のものなのか をな・・・!」 「ひっ!?ちょっと待・・・待って直人っ!あっ!・・・・・・・・・・あんv」 ―間― 「・・・・・・」 ベッドの上で身を起こして竜也はじっと己の体を見下ろした。 いつも以上に、まるでマーキングのようにこれでもかとつけられたキスマーク。 目に見える範囲のモノを一つ一つ数えていて・・・途中でやめて小さく溜息をついた。 「芸能人にまで妬かないでよもう・・・」 ぽつりと呟き、チラリと横目で隣で背を向けて寝ている直人をうかがった。 黙した背中は微動だにしなかったけれど、何となく起きていることを確信しつつ竜也は続 けた。 「ドキドキしたのはさ〜、直人を思い出しちゃったからでそーゆーんじゃ全然ないんだって」 言いながら竜也も横になり、直人に添うように背中からそっと抱きついた。 「俺が好きなのは直人だけだよ・・・。俺は丸ごと全部直人のものだってば」 背中に頬をすり寄せ囁いて目を閉じる。 しばらくして、竜也は付け足すように小さく言った。 「ごめんね変な話して。でも・・・ちょっと嬉しかったな♪」 くすくす笑う竜也に背中越しに不貞腐れた声が一言呟いた。 「・・・うるさい///」 |
こっちの(笑)直人が独占欲強くて嫉妬深いのは
今に始まったことではないですが。
外見全く似てないというのに
細かいところで直人を重ねて
ときめく竜也はある意味凄いかも。(笑)
直人しか見えてませんからね〜。(笑)