| 幸せの温度 |
カーテンの隙間から入り込む光に直人は覚醒を促される。 まだ寝ぼけた頭で、条件反射的に隣にあるはずのぬくもりに手を伸ばす。 しかしその手はむなしくシーツに触れるだけで。 「・・・?」 何度も繰り返しているとその手を突然掴まれ、直人は飛び上がった。 「おわぁっ!!」 一気に眠気も吹き飛んだという勢いで体を起こした直人の前には、ベッドの傍らに座り込 んで目を丸くする竜也の姿があった。 「び・・・っくりしたぁ。どうしたの?」 「こっちの台詞だ!一体どうしたんだその手は!?」 直人が驚いたのは不意打ちに手を握り返されたことではなく、竜也のその手の冷たさだっ た。 焦る直人に竜也はニッコリと笑って立ち上がった。 「見て!直人」 そして一気にカーテンを開く。 まぶしすぎる光に目を眇めつつ外をのぞくと、そこには太陽の光を照り返さんばかりに輝 く一面の銀世界が広がっていた。 「すっごいだろ!昨日までの曇り空が嘘みたいだろ!?おまけにこーんなに積もっちゃっ てさ。俺もう嬉しくって・・・」 「朝っぱらから手袋もつけずに遊んでたわけか」 「当たり〜♪」 昨夜まで降り続いていた雪は見事に降り積もり、一転して回復した天気は極上。抜けるよ うな青空で。 喜び庭駆け回る犬よろしくはしゃぐ竜也の様子は容易に想像がついて、直人は溜息をつい た。 「ったく・・・。はしゃぐのはいいが風邪でもひいたらどうするんだバカが」 「えへへへ、つい・・・さ。だから防寒し直しに来たんだよ。ね、直人も行こうよ」 「その前に少し温めろ。指先真っ赤だぞ」 直人はそう言うと、かじかんだ竜也の両手をぎゅっと握ってその指先に息を吐きかけ擦り 合わせた。 竜也は思わず赤面する。 すぐそこに毛布なんかもあったりするのに。 さっき入れた暖房が結構効いてきてたりするのに。 直人がその手で自分を温めてくれるその行為が気恥ずかしくも嬉しかった。 「どうした?」 「あったかいね・・・直人・・・」 「お前が冷え過ぎてるんだ」 「あったかいよ」 程よく温まったその手をそのまま伸ばして、竜也は直人にそっと身を寄せた。 甘えるように擦りついてくる竜也を直人も抱きしめ返す。 「『あったかい』って思うのと『幸せ』って思うのって何だか似てるな〜・・・」 「・・・何ならもっと熱くしてやってもいいぞ」 そんなことを耳に息を吹き込むように囁かれ、同時に悪戯な指先が背中をつつつと滑って、 竜也は慌てて体を離し赤面した顔をさらに紅潮させて直人を睨んだ。 「朝から何言ってんだよもう!せっかく人がハートウォーミングになってんのにさ〜・・・。 ほらさっさと起きて着替えた着替えた!」 「はいはい・・・」 竜也に追い出されるようにベッドから這い出した直人は服を持って洗面所へと向かい、竜 也はその後ろ姿を見送って、改めて窓の外を眺めた。 雪化粧した白い家並みに青い空のコントラストが映えて、あまりにも綺麗でじっとしてい られなくて。 思わず一人で外に出たけれどやっぱり寂しくなって戻ってくると、思いがけず直人が優し くて。 竜也は弛む頬を押さえきれないまま直人が温めてくれた手に頬をすり寄せた。 寒いから・・・あったかくして出掛けよう。 コートを着て。 マフラーも巻いて。 缶コーヒーをカイロ代わりにして。 寄り添って。 こっそり指を絡めて手なんか繋いじゃったりして。 透き通るような青空の下、真新しい雪に足跡をつけながら。 二人で歩こう。 吐く息は白くてもきっととても暖かい・・・。 「浅見」 そんな幸せな想像に浸っていたところに後ろから声を掛けられ、竜也はハッと振り向いた。 見れば、すっかり身支度の整った直人が立っていて。 「行くんだろ?」 そう言って微笑む直人に竜也は、 「うん!」 と元気よく答えて。 暖かくて幸せな想像を現実にするべくコートとマフラーを手にドアを開けた。 |
丁度1年ぐらい前に書いて
「紅企画」さまに捧げたものを再アップ。
企画のお題は
「青空」
「指」
「禁プラトニック」
で炎赤or赤炎というものでした。
読み返すとどれも中途半端ですね・・・。
それはさておき冬って好きです。
寒いの平気だし(あくまで高知基準)
色んなものが、それこそほんの些細なことでも
「あったかい」って感じられるから。
「あったか〜い」って感じると幸せ感じませんか?
でもこれを言うとたいていの人から
「だから冬が好きってのは何かおかしい」と言われます。(笑)