| お爺ちゃんの知恵袋 |
「ふぅ・・・」 いつものように直人の部屋でくつろいでいた時、竜也は溜息をこぼした。 本日何度目かのそれに、直人は広げていた雑誌から顔を上げた。 「どうした?今日はやけに溜息ばかりついてるな。具合でも悪いのか」 そう言われて竜也は直人に向き直り、じーっとその顔を見つめたかと思うと、おもむろに 思いつめた表情で直人ににじり寄った。 「直人」 「な、何だ?」 妙に迫力のある竜也に直人は思わずたじろいだ。 「今日の晩飯美味かった?」 「は?」 予期しない竜也の問いに、身構えていた直人は脱力する。 今日は会う約束はしていなかったのだが仕事帰りの竜也が食材を買い込んで突然やってき たので、そのまま竜也が食事を作り二人で夕食をとった。 献立も味も普段とさして変わらず美味で問題はなく、質問の意味を図りかねた直人だった が、やけに真剣な竜也の様子にとりあえず素直に答えた。 「あ、ああ・・・。美味かったぞ」 「ほんと?俺って料理上手だと思う?」 普段なら直人の言葉に小躍りして喜びそうなところだが、今日の竜也はさらに身を乗り出 して問い詰めてきた。 「何だってんだ一体・・・まあ標準よりはかなり上手い方なんじゃないのか?少なくとも 俺は上手いと思うぞ」 訝しそうにしながらも真面目に答えてくれる直人に竜也は一瞬安堵したようだったが、す ぐにまた不安そうな表情で問うた。 「じゃあさ・・・」 しかし先程と違って今度は歯切れが悪かった。 恥ずかしそうに口篭もり視線を泳がせながら、 「え・・・とね。あの・・・そのぉ・・・」 などと言いよどむ竜也の頭を直人は軽く小突いた。 「らしくないな。心配事があるなら言ってみろ。今さら変な遠慮なんかするな」 そして優しく言葉を掛けて竜也に先を続けるよう促してやる。 そんな直人に竜也は意を決すると、まっすぐ直人の目を見て一息に言った。 「俺って床上手?」 聞いた瞬間、頭の中に無数の鳩が飛びまわった直人はそのままの姿勢で真後ろにひっくり 返った。 「ちょっと直人何こけてんの!?俺真剣に聞いてるんだよっ!?」 直人のリアクションに憤慨する竜也だったが、それに劣らぬ勢いで直人も起き上がって激 昂した。 「これがこけずにいられるか!!一体誰に何を吹き込まれてきたんだお前はっ!?」 キレてしまった直人に、さすがに自分でも話の唐突さを反省したのかしゅんと小さくなっ た竜也はポツリと言った。 「この間さ、爺ちゃんに呼ばれて・・・言われたんだ」 「爺さん・・・?」 「うん」 竜也の祖父といえば、母方の祖父にあたる鷹宮義隆翁である。 浅見に並ぶ大財閥、鷹宮コンツェルンの総帥。 第一線を退いて久しいとはいえ今もって強大な発言力を持つ政財界の大物中の大物である。 その存在は直人も知るところだが、正直竜也の口からその名前を聞いて、またややこしい ところが出てきたな・・・と、直人は眉間の皺を深くした。 「それで?俺のことが耳に入って反対でもされたのか?」 「ううん。知られてはいるけど別に反対されてるわけじゃないよ。むしろ応援してくれる みたいでさ」 「そ、そうか・・・」 それもまた複雑な直人だった。 そして竜也は数日前の出来事を話し始めたのだった。 「うむ!なかなか見事な腕前じゃ。美味かったぞい竜也。チョベリグじゃv」 相変わらずの(しかも古い)ズレた若者言葉に肩を落としつつも、自分に空手を教えてく れた敬愛する祖父の満足げな様子に竜也も自然と口元がほころんだ。 「よかった。でもどうしたの?突然呼び出してさぁ・・・。組み手の相手はともかく料理 させられるとは思わなかったな」 「うむ。ちと確かめたいことがあってな・・・。竜也そこに座りなさい」 食後のお茶をすすった後急に口調が変わった祖父の言葉に、もともと座っていた竜也は居 住まいを正した。 神妙な空気の中、鷹宮翁は口を開いた。 「お前・・・男と付き合っとるそうじゃな」 思いもかけない祖父の爆弾発言に竜也は固まった。 無言のまま徐々に顔を赤く染める孫の様子を鷹宮翁は愉快そうに笑った。 「ふぁっふぁっふぁっ♪そんなに慌てんでもわしゃ別に反対なんぞしやせんぞ?今時珍し いことでもあるまいて。っていうか〜全然オッケーってカンジ〜vvv」 厳しく堅い口調で言われただけに、てっきり非難されるかと思っていた竜也はほっと肩の 力を抜いた。 「何だよもう〜。脅かさないでよ爺ちゃん。でもじゃあ何?確かめたいことって」 竜也に改めて問われ、鷹宮翁は笑いを収め一つ咳払いをして言った。 「まぁひとつは料理の腕前じゃ。これは文句なく合格点じゃが・・・」 「は?何それ。何で俺の料理の腕なんて・・・」 「何を言っとる。大事なことじゃぞ。良い女房の条件は『料理上手に床上手』と昔から言 うてな・・・」 「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待った!!女房って何だよ女房って!?」 さらっととんでもないことを言われた竜也はまた顔に血を昇らせて慌てて言い募った。 それを鷹宮翁はきょとんとして見つめた。 「なんじゃい。どうせお前が女役なんじゃろ」 「な、な、な・・・」 当然のように断定する祖父に竜也は二の句が告げられず、ただ口をぱくぱくと開閉させる だけのそのさまは目を剥いて紅潮した顔とあいまって池の鯉さながらで、そんな竜也の様 子に鷹宮翁は得意げにニヤリと笑った。 「わしの眼力を見くびるでないぞ竜也。さっき組み合ってみて確信したわい。その腰は可 愛がってもらっとる腰じゃv」 ぼんっと顔から火が出そうなほど真っ赤になって思わず竜也は自分の腰のあたりを押さえ る。 どこら辺がどうだというのか。 突っ込み所満載なのだが、今の竜也にその辺を突っ込む余裕はなかった。 第一突っ込んだら突っ込んだで何を言われるか分かったものではなかった。 「さてそこで話を戻すが・・・」 いまだパニクったままの竜也を無視して鷹宮翁は話を進めた。 「そう。古今東西昔から男を夢中にさせるには、美味い料理で食欲を満たし、寝所で相手 を喜ばせて性欲を満たしてやることが肝要なのじゃ」 熱く語る祖父を尻目にパニクり過ぎて段々気力が尽きてきた竜也だったが、それでも一応 言うべきことは言ってみた。 「あのさ爺ちゃん・・・俺も男なんだけど・・・」 「だからじゃ!男の身でお前がどれだけちゃんと相手の男の心を掴んでおることができる か、わしゃ心配でのう・・・。料理についての不安は解消されたが寝所の方は知るべくも ないからのう・・・。どうじゃ、うまくやっとるのか?マグロになっとるようじゃいかんぞ」 「マグロ・・・」 止めの一言に気力尽き果てた竜也はテーブルに突っ伏した。 その耳に鷹宮翁の声はいつまでも響いていた。 「こりゃ竜也。ちゃんと聞かんか。よいか、忘れるでないぞ。『料理上手に床上手』じゃ。 よくよく精進して相手の身も心もしっかりゲットしておくんじゃぞ。まぁお前の器量なら 大丈夫とは思うが・・・。おおそうそう。そのお前の男、そのうちわしにも紹介してくれ。 超楽しみにしとるからのvvv」 「その時はただただ呆れ返ってたんだけどさ・・・なんか段々不安になっちゃって・・・。 俺、ちゃんと直人を満足させてあげられてるのかなって。だから・・・あれ?どうしたの 直人。今度は前のめりに倒れちゃって」 「・・・・・お前の家族はどうして揃いも揃ってそうなんだ・・・・・」 話を聞いた直人は顔をあげる気力もなく、その場に倒れ伏したまま声を絞り出して言った。 父親に母親。そして祖父。 頭痛の種をまた一つ背負い込んだ未来の浅見家婿養子(予定)であった。 |
つーいーに!
悲願(?)のお爺さま登場です!!
あの若者言葉、使い方難しかったです。(笑)
あの方わざと無理矢理使うじゃないですか。
その辺こう会話として自然且つ不自然に使うのが難しいみたいな。
(訳がわかりませんね。すみません)
やっぱりこの方は応援派だと思うんですけど
こうなると渡パパが肩身せまくて可哀相かも。(笑)
直人的には・・・どうなんでしょうねぇ。