| 勝手にしやがれ! 〜LoveLoveSHOW・10〜 |
Side NAOTO |
食事をして。 雑談を交わして。 風呂に入って後は寝るだけ。 その風呂は今浅見が先に使ってる。 いつものことだが、一人残された俺は妙にそわそわと落ち着かない気分になる。 それはやはりこの後のことを考えてしまうからなんだが・・・。 もう両手が二本ずつあっても足りないぐらい抱き合っているというのに、俺は一向にこの 短いが独特な時間をすごすことに慣れない。 それは会えない時間が長いせいなのか。 そう。俺たちはそうしょっちゅう会えるわけじゃない。 お互いに仕事をしているし、とりわけ浅見の方が休日も不規則で忙しい。 内容も、どう贔屓目に考えても浅見の方が激務をこなしているはずで。 そんな中でお互いに休日を繰り合わせて前日の夜からゆっくりすごすことのできるこの時 間は、お互いにとても貴重で。 『俺ね、いつもこの瞬間の為に頑張ってるって気がする。直人と一緒にいると心から安ら げるんだ』 そう言って浅見は微笑む。 俺と共にすごすことが浅見の安らぎになるのなら俺は喜んで側にいてやるが、それならば なおさらたまにはこう・・・寄り添い合ったままゆっくりと眠って夜を過ごす方がいいん じゃないかと思うこともある。 あるにはあるがそれが実践された例は一度としてない。 まああれだ。俺も若い男なわけだから。 頭でどうこう考えていても、実際久しぶりに会う生身の恋人を目の前にすると、相手の体 を労わってやろうなんていうそんな理性が本能の前に如何にもろいものか実感させられる わけだ。 浅見に触れたい気持ちを止められない。 前に抱いたのはどれくらい前だったか。 その時のあいつはどんなだったか。 色々色々余計なことが頭を侵食し始めて、どうしようもなくはやる心と身体を半ば持て余 して、俺は何度もろくに見もしていないテレビのチャンネルを変える。 まったく・・・セックス覚えたて、彼女出来たてのガキじゃあるまいし。 しっかりしろ俺。 「直人ー。お風呂上がったよー」 そんな俺の気も知らず浅見が声を掛けてくる。 脳天気なその声と口調に一瞬ムカツク。 人の気も知らないでこいつ・・・。 お前が何も考えず呑気に風呂入ってる間俺がどれだけモヤモヤしてるか・・・っ。 やめよう。何か情けなくなってきた。 「・・・ああ」 努めて冷静な振りをして浅見に短く返事を返して俺はテレビを消した。 風呂場に行くには台所を横切らないといけないんだが。 そのまま何も気に留めず真っ直ぐ歩けばいいものを、思わず立ち止まってしまって俺は激 しくそれを後悔することになる。 台所ではシンクに向かって立つようにして、今まさに風呂上りな浅見がミネラルウォータ ーをペットボトルのまま飲んでいた。 何も腰にタオル一枚とかそんな扇情的な格好をしていたわけじゃない。 わけじゃないんだが・・・っ! ただのスウェットの上下だってのに湯上りのその姿がとてつもなく色っぽく見えるのは 『恋人の欲目』なんだろうか。 生乾きの髪が張り付いた項。上気した頬。水を溜飲するたびに上下する心持ち反った喉元。 まだほのかに全身から立ち上る湯気と一緒に香る石鹸の香り。 それらを目にした瞬間からの俺の行動はほとんど無意識だった。 素早く浅見のところまで距離を詰め、有無を言わせず抱き寄せ深く口づける。 驚いたのだろう。浅見の体が強張ったが構わずに続けた。 風呂上りで上気した身体と水を含んでいた為に冷えた口内とのギャップに妙にそそられ、 一層きつく抱きすくめ、舌を絡めて思うさま貪った。 冷たかった口内がキスですっかり温まる頃には、浅見も俺に身を預けるようにして自分か らも舌を絡めてきた。 未だにペットボトルを持ったままだった手がどうしようか迷うように宙をさ迷っているの に気がついて、ペットボトルを取り上げシンクに置いてやると、その手はすぐに俺の背に まわされた。 抱き合って、ほぼ同じ身長のはずなのに上から覆い被さるような格好になるほど深く浅見 を求めて、俺は何度も角度を変えて口づけた。 激し過ぎるキスが息苦しいのか時折眉を顰めるその艶めかしい表情にさらに煽られ、この ままここで押し倒してしまいたい衝動に駆られた。 俺は湧き上がる欲望のまま、浅見を抱きしめていた手をその身体のラインに沿って下ろし てスウェットの布越しに腰を弄り、そのまま双丘の奥を探るようにその間に強く指先を押 し込んだ。 「あ・・・っ!」 その途端浅見の体が大きく震え、聞こえた短い悲鳴に俺は我に返った。 な・・・何をやってんだ俺はこんなところで!! がっつくにもほどがあるぞ、くそっ!みっともない・・・っ!! 一気に理性が戻ってきて気まずい思いで浅見を見ると、浅見は上気していた顔をさらに赤 くして戸惑うように俺を見つめていた。 我ながら現金だとは思うが、浅見のその様子に俺は少し余裕を取り戻す。 主導権が自分にあるかのような思い込みにも似た薄っぺらい余裕。 知られてたまるか。 お前を前にしていると、そんなちっぽけな余裕すら無くしかけることがあるなんて。 俺はわざとからかうように口元で笑みを作り、 「続きは後でな」 なんて余裕ぶった台詞を浅見の耳元に囁いて、即座に浅見を置き去りに風呂場へ向かう。 案の定「ばかっ!」なんていう悔しそうな声が飛んでくるのをドア越しに背中で聞いて、 俺はほっと安堵の溜息をつく。 やばかった。 今のは本気でやばかった。 ったくほんとに・・・情けないったらないな・・・。 俺はいつになったらもっと落ち着きと余裕を持ってお前を受け止めてやれるようになるん だ? もしかしたら・・・一生無理かもな。 いつまでもお前に振り回されて。 少し不公平じゃないか? 俺ばっかりがこんなにもお前に夢中だなんて・・・な。 |
直人編。
実はいっぱいいっぱいなんだけど
余裕ぶって何とか主導権を握っていたい攻めの懊悩。(笑)
今のところは成功してる・・・のかな?