| 聖痕―Stigma― |
夜中。 ふと目を覚ますと薄暗い視界に直人の背中があった。 広いその中のある一点に目が止まる。 キズアト。 直人だけでなく、かつて俺にも数多くの傷があった。 大きいものも小さいものも。 死と隣り合わせの、命を掛けた戦いをくぐり抜けて負った傷。 それらは、平和になった今、皆の記憶から数々の事件が忘れ去られていくのと同じ速度で、 少しずつ薄れていってもうほとんど残っていない。 なのに直人のこれだけは全然消えていかなくて。 今となってはもう、多分一生消えないんじゃないかと思う。 確かに一度は直人の命を奪った銃弾の痕。 あの時のことは今でも忘れられない。 思い出すだけで身も心も凍りそうになる。 糸の切れた人形のように力を失った体。 急速に冷えていく体温。 二度と開かれない閉じられた瞼・・・。 急に恐くなって、俺は直人の背中に抱きついた。 温かい・・・。 耳を押し当てれば背中越しにも命を刻む音がはっきりと聞こえる。 そう。直人は生きてる。 何がどうしてどうなったのかなんて知らない。 そんなことはどうでもよかった。 だって直人は間違いなく生きてココにいるから。 それだけが全てでいい。 そして今こうして寄り添い合えることはとてつもなく幸せで。 あれは悪い夢だったんじゃないかって思うこともあるけど、そうじゃない確かな証がここ にある。 もう。 もう二度と。 あんな思いは・・・! 「ん・・・」 祈るような思いでそこに唇で触れると、直人が小さく身動ぎした。 起こしちゃったかな? 一瞬そう思って思わず体を離したけど、すぐまた規則正しい寝息が聞こえてホッと胸を撫 で下ろした。 直人。 直人。 大好きだよ。 もしもまたお前を失うことがあったら、俺は今度こそもう生きていけない。 だから。 長生きして。 一分一秒でもいいから俺より長生きして。 この傷がいつか消えてなくなるぐらい長生きして。 願わくば俺もずっと・・・直人の側で・・・。 願いを込めてもう一度そこに口付けて、俺は直人のぬくもりを全身で感じながら目を閉じ た。 寝息が規則正しくなるのを確認して目を開ける。 俺をかき抱くように回された腕をやんわりと解いてその寝顔を覗き込む。 知っている。 時折夜中に目覚めたお前が、俺の存在を確認するように俺を抱きしめること。 その度に俺は思い知る。 俺が傷つけ、えぐったお前のキズアトの深さを。 自分の生き方を後悔してるわけじゃない。 けれど。 お前の心に消えない傷を残して、それに苛まれるお前を見るのは少し辛くて。 大丈夫だ浅見。 俺はもう二度とお前を置いて行ったりしない。 お前のその傷を埋め尽くすぐらいそばにいてやる。 いや。 いさせてくれ。 一生愛し抜くと誓うから。 だからどうか・・・。 願いを込めて、俺は眠る浅見の瞼に口づけた。 |
CaseFile49「千年を超えて」
何度見ても泣いてしまう私は
おかしいんでしょうか?(爆)
ところでウチの二人はしょっちゅう同衾してますが
決して一緒に暮らしてるわけでわないのです。(笑)