| あの夏の花火 |
一面に広がる暗闇の向こうから聞こえる、寄せては返す波の音。 夏も終わりに近づいた夜の海辺に灯る、ぱちぱちと音を立て色とりどりの輝きを放ちなが ら爆ぜる花火。 その光に照らし出される二人の人影。 次から次へと火を灯しては自分の手元で鮮やかに咲く火の花を時には両手に持ってみたり、 高くかざして円を描いてみたりする天馬の周囲で、パシャパシャと幾度もシャッターを切 る音が響きフラッシュがたかれる。 やがて天馬は、カメラの向こうでひたすらシャッターを切り続ける男に声をかけた。 「なぁ誠〜」 「何だ?」 名を呼ばれて誠はカメラを構えていた腕を下ろして顔を上げた。 「写真もいいけど少しはお前もやれよ。せっかく一緒にやろうと思って来たんだからさぁ」 不満気な天馬の少し拗ねた口調に誠は苦笑した。 「すまないな。あんまりキレイだったからつい・・・。一種の職業病だな」 言いながらカメラをバッグにしまう誠に天馬は小首を傾げた。 「職業病?」 「そうだ。キレイだとか、何かを感じて強く心を動かされるものを前にするとカメラに収 めずにはいられない気持ちになるんだ」 「へ〜え。あ、これお前の分な」 カメラをしまって手ぶらになった誠に天馬は花火の束を差し出す。 誠は微笑んでそれを受け取った。 「ああ。ありがとう」 それからしばらくは、鮮やかに咲いては散る花火に二人して童心に戻ったように興じた。 お互いに最後の一本に火をつけ、目の前で極彩色に散る火花を見つめながらふと天馬は呟 いた。 「なぁ」 「ん?」 「さっきお前が撮ってたのってさー・・・花火?それとも・・・俺?」 悪戯を仕掛ける子供のような表情で自分を覗き込みながらそんなことを聞いてくる天馬に、 誠は一瞬目を見開いたもののすぐにバツが悪そうにぷいと横を向いた。 「・・・・・・聞くなよ」 ぽつりとそう呟いた横顔が決して花火の光に照らされたせいではなく、ほんのり赤く染ま っているのを見て、天馬は嬉しそうに笑った。 |
彼氏がカメラマンってなんかいいですね。
色んなシチュで役立ちます。(笑)
しかしなんだか天馬が乙女だ・・・。(苦笑)