恋は戦い!?-round2-



ある日直人の本業である格闘家としての試合が決まった。
国内最強とうたわれ、ついには対戦相手がいなくなりリングに上がれなくなった格闘王に
無謀にも挑戦しようというものが現れたからだった。
もちろん直人に否はなく、本日は試合当日。
久々のリングに意識を集中する直人の控え室のドアが不意にノックされた。
「よ!直人!」
ひょこっとドアから顔をのぞかせて明るく声を掛けてきたのは天馬だった。
「天・・・」
もともと格闘技ファンであった天馬にねだられ、直人は今日の試合のチケットを送ってい
たのだった。
わざわざ控え室にまで激励に来てくれた仲間であり今や恋人でもある天馬の姿にほころび
かけた直人の口元は後ろに続いた人物を見て引き締められた。
「・・・なんであんたが来るんだ伝通院」
「・・・君が招待してくれたんだろう?何を言ってるんだ」
直人がチケットを用意したのは天馬の分だけではなかった。
当初天馬にだけ渡したところ、「仲間を何だと思ってるんだ!」と実はかなり図々しいこ
とを当然のように諭され、直人はグランセイザーの仲間全員にチケットを送っていた。
「皆ちゃんと来てるぜ?けどまさか全員で控え室まで来るわけに行かないからさ。俺と洸
が代表して激励に来たわけ!」
直人の心中も知らず、得意そうに言う天馬に直人は恨めしげな目を向けた。
(だから何でよりによってお前とこいつなんだ・・・)
洸のことはグランセイザーの仲間としても医師としてもその人間性や技量を認めてはいる
ものの、こと天馬に関してだけは未だに最も警戒すべき恋敵だと思っている直人である。
そんな直人の感情を隠しもしない表情に洸はフッと笑って言った。
「天馬一人で来させたら試合前に余計な体力を消費するコトになりかねないだろう?そん
なバカバカしいことで負けでもしたら末代までの恥だろうからな。俺なりの配慮だよ」
痛烈な嫌味に直人は洸をジロリと睨みつける。
しかし天馬は洸の言葉の意味が分からずきょとんとして小首を傾げた。
「なーにわけ分かんねーこと言ってんだよ洸!直人が負けるわけねーだろ?最強の男なん
だぜ!なあ!?」
満面の笑顔でそう訊ねてくる天馬に洸を威嚇していた直人もつられて目元が弛む。
「ああ、もちろんだ」
二人の間に漂うえもいわれぬ空気に洸はわざとらしく咳払いをした。
「どうかな。直人にはブランクがあるし・・・試合は始まってみなければ分からないもの
だからな」
明らかに棘のある言い方に流石の天馬もムッとする。
「何だよ洸さっきから!直人に負けてほしいのかよっ!!」
「そんなことは言っていない。頭から可能性を無視して足元をすくわれんようにと忠告し
ているだけだ。まぁもし何かあってもすぐそばに俺がついているから安心したまえ」
「ご忠告痛み入るが・・・あんたの世話になるようなことは万に一つもない。俺は絶対に
負けん。誰が相手だろうとな」
「ほう流石・・・大した自信だ」
「当然だ」
「『おごる平家は久しからず』という言葉を知っているか?」
「知らんな」
「学が足りんな」
「何だと・・・」
「いい加減にしろっての!!」
今にも装着して戦いだしかねない一触即発の空気に天馬が割って入る。
「何なんだよもう!応援に来たのに何で喧嘩腰になってんだよお前ら!!」
二人の険悪さの原因が自分であることなどまるで分かってない天馬に毒気を抜かれ、二人
は顔を見合わせ溜息をついた。
「?な・・・何だよ・・・???」
そんな二人のリアクションに天馬は頭にクエスチョンマークを飛ばしてただ戸惑うばかり
だった。
控え室にてそんな一件があった後、ほどなくしてゴングの鳴らされた試合はわずか数秒で
片がついた。
もちろん直人のKO勝ちである。
久々にリング上に格闘王の姿を目にしただけでも興奮状態だった場内を埋め尽くす観衆は、
『秒殺』という衰えを知らぬ圧倒的な強さを見せ付けられて騒然と湧き返った。
リング上では早々と勝利者インタビューが行われ、レポーターが直人にマイクを向け「お
めでとうございます」の言葉に続いてお決まりの質問を投げかけていた。
「今日の勝利の喜びを誰と分かち合いたいですか?」
という質問に直人は無意識に観客席の天馬へと目を向け・・・そのまま目を剥いて固まっ
た。
観客席で天馬は隣に座っている洸に縋り付いていた。
その他大勢の観客同様、直人の劇的な勝利に興奮した天馬は歓喜のあまりに隣の洸に抱き
ついたのである。
驚いたのは洸も同じだったが、耳元で「すげぇすげぇ!!」と喚き立てる天馬にすぐに冷
静さを取り戻し、洸はさりげなく落ち着かせる素振りを装いどさくさまぎれにしがみつい
てくる天馬の肩をそっと抱き寄せた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
直人がこちらを見ていると知った上での明らかに意図的な洸の行動に直人は無言で拳を握
り締めた。
控え室でのこともあり、試合前声援に振り向いた観客席で当然のように天馬の隣に座って
いる洸の姿を見ただけでも腹立たしかったところへ火に油を注がれ、直人の怒りはMAXで
あった。
「あ、あの〜松坂さん・・・?」
突然目つきが鋭くなって黙り込んだ直人に哀れなレポーターはたじろいだ。
しかしそこは流石プロというべきか。そそくさと話題を切り替えてさらにマイクを向けた。
「え、え〜と、その、こ、今回の勝利で連勝記録を伸ばして最強伝説はまさに磐石となっ
たわけですが、今後松坂さんにとって倒すべき敵となる相手は果たしてあらわれるのでし
ょうか?」
「倒すべき敵・・・?」
レポーターのその言葉に直人は観客席を睨みつけたまま地を這うような低い声で言い放っ
た。
「案外近くにいるかもしれんな・・・」
憤怒の形相を浮かべた最強の男の迫力にレポーターは訳が分からないながらも今度こそ青
褪めて言葉を失い、小さく「あ、あり、ありがとうございました・・・」と呟いてインタ
ビューを終了した。
リング外の戦いは今まさにゴングが鳴らされたばかりだった。





伝センセが何だかヤな人で申し訳ない!
まぁ恋敵ってことであえて・・・ね。(笑)
言葉遣いとかお互いの呼び方とか・・・
だいぶ捏造してます。
イメージイメージ!(こら)


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