恋は戦い!?-round1-



「あれぇ!?」
堀口博士の研究室にて留守番中の天馬は意外な人物の訪問に思わず声を上げた。
「・・・何をそんなに驚いてるんだ」
「いやだってさ・・・。いつ戻ってきたんだよ直人!」
訪問者は例によって修行の旅に出ていた直人だった。
一度旅に出るとなかなか帰って来ない上に行き先も定かではなく、緊急時以外はろくに連
絡も取れないので声を聞くのも結構久しぶりな天馬は直人に会えたことを素直に喜び嬉し
そうに笑って部屋に招き入れた。
「で?今回はどの辺に行ってたわけ?」
話の種にそう聞くと直人は天馬にずいっと紙袋を差し出した。
「何?」
「土産だ」
「あ、そ、そう。悪ぃな」
ぶっきらぼうに渡された袋の中身をのぞくとそこにあったものは、「讃岐うどん(真空パッ
ク・つゆ付3食入り)」「坊ちゃん団子」「カツオたたき」「徳島ラーメン」等々。
「・・・・・・・・・・」
天馬はそれらを無言で見つめながら思った。
(今回は四国か・・・。つーかこれ賞味期限とかどうなんだよ)
と。
そしてはたとあることを思い出し天馬は顔を上げた。
「そうだお前!蘭や豪のトコにはちゃんと顔出してきたのか!?」
「いやまだだ」
即答した直人の答えに天馬は大きく溜息をついた。
「お前なあ・・・。あいつらお前のこといっつもすげぇ心配してんだぞ!?まがりなりに
も大地のトライブのリーダーなんだから俺よりまず二人のトコに行ってやらなきゃだめじ
ゃねぇか!」
そう言って天馬はお茶を入れようと直人に背を向けた。
だから気がつかなかった。
ともすれば説教じみた天馬の言葉に直人が不愉快そうに眉間に皺を寄せたことに。
「天馬」
「うわっ!!」
名前を呼ばれると同時に突然後ろから抱きすくめられ、天馬は驚いて声を上げた。
「な、何だよイキナリ!」
「真っ先に恋人に会いに来て何が悪い?」
直人に向き直って文句を言おうとしたところに、真っ直ぐ目を見つめられてそんなことを
言われ、天馬は返す言葉を失って口をつぐんだ。
「こ、こ、恋人ってお前・・・」
それは事実ではあったのだが、何分まだ直人とのそういう関係に慣れていない天馬は正面
切って「恋人」などと言われただけで見る間に真っ赤になる。
日頃あまりそういう素振りを見せないくせに、不意打ちでそんな甘い言葉を平然と使って
くる辺り性質が悪い・・・と天馬は思う。
途端にしおらしくなって俯く天馬に満足げに微笑み、直人は再度天馬を抱き寄せ顔を上げ
させた。
「天馬・・・」
「あ・・・」
そしてそのまま降りてくる唇に少し身を固くしたものの、天馬は目を閉じて大人しくそれ
を受け入れた。
押し付けるように重ねられた唇の間から性急に差し込まれた舌が口腔内を暴れ回り、いき
なりの激しく濃厚なキスに天馬は戸惑う間もなく飲み込まれる。
「ん・・・ん・・・!」
その上キスが深まるにつれ容赦のない力できつく抱きしめられ、天馬は息苦しさに眉を寄
せた。
けれどそんな骨が折れそうなほどの力強い抱擁がかえって久しぶりに会った直人の存在を
リアルに感じさせ、天馬は胸を熱くした。
「はふ・・・」
角度を変えるわずかな瞬間に息をつぎ、いつしか天馬も自分から直人に口付け舌を絡めた。
背中に腕を回して縋りついてくる天馬になおさら飢えと愛しさが募り、直人は一層天馬を
強く抱きすくめると前のめりに体重を掛けた。
「ん?ん!?ん〜っ!!」
気付いた時には既に遅し。
直人を支えきれずにバランスを崩した天馬は直人もろともソファの上に倒れ込んだ。
その勢いのまま上にのしかかってくる直人に、甘い快感から一転正気づいた天馬は大慌て
で捲くし立てた。
「わあっ!ちょ、ちょっと待った!!ストップ、ストーップ!!」
目の前で赤い布をひらめかせられた猛牛をなだめるように、天馬は直人の顔の前に両手を
突き出して縦に振りたくった。
そもそも牡牛座とはギリシャ神話において大神ゼウスが見初めた美しい娘をかどわかすた
めに用いた仮の姿が元になっているといわれ、その星座を冠する戦士の強引さは筋金
入りというわけで。
調子に乗らせたら手がつけられないことを天馬は経験上学習していた。
「あ、あのな直人。俺留守番してんだよ。博士がさ、未加と剣連れて買い物行ってて・・・
そろそろ帰ってくる頃なんだよ。な?だから・・・これ以上はヤバイって!!」
「・・・早目に済ませる」
「ば・・・っ///てめふざけんなっ!!そーゆー問題じゃねーだろ!?」
言い募る天馬を無視して直人は据わった目つきでにじり寄り、その迫力に天馬はじりじり
と後ずさったが狭いソファの上ではすぐに追い詰められてしまう。
そして完全に天馬に覆い被さった直人はさらに逃げ道を塞ぐように天馬の顔の両脇に手を
ついた。
「な、なお・・・っんぅ!!」
再び唇をふさがれ、天馬は直人の下でじたばたともがき胸や背中を叩いて抵抗を示した。
それを直人は圧倒的な体格と腕力の差にモノを言わせて難なく抑え込み、天馬の両足の間
に体を入れて執拗に唇を貪った。
「ふ・・・うん・・・っ」
やがて天馬の抵抗が弱々しくなるまでそれは続けられ、直人はようやく天馬の唇を解放し
てうかがうように天馬を見下ろした。
「や・・・ダメだ・・・」
息も絶え絶えにそれでもそう訴える天馬だったがその声は熱を持って震え、目元は赤く染
まり瞳は潤んで艶を帯びて・・・もはや抵抗は形ばかりのもでしかないことは一目瞭然だ
った。
「天馬・・・!」
天馬のその様子にますます煽られた直人はごくりと喉を鳴らして天馬の首筋に喰らいつき、
乱暴にシャツを捲り上げて肌を撫で回した。
「ああ・・・やだ・・・っ!」
ゆるく頭を左右に振りつつも、直人の手の平が触れる感触とそこから沸き起こる感覚に天
馬はぎゅっと目を閉じて革張りのソファの背を掴んだ。
その時。
「直人っ!!」
「直人さんっ!!」
ばんっと派手な音を立てて蝶番も外れんばかりの勢いでドアが開け放たれた。
予期しない突然の来訪者とその剣幕に流石の直人も思わず天馬から身を離し、天馬は天馬
で驚きのあまりに凝固した。
「ら、蘭・・・?豪・・・?」
少なからずよろしくない状況に半ば上ずりながら来訪者二人の名を呼んで顔を向ける間も
あればこそ、直人は二人に両腕をがしっと掴まれた。
「何やってるんだお前はっ!!」
「そうですよ!ひどいじゃないですか!」
「な・・・!?」
「ろくに連絡もよこさないで・・・帰って来た時ぐらいすぐに知らせてくれたっていいだ
ろう!?」
「私たち3人で大地のトライブでしょう?直人さんのこと、いつもすっごく心配してるん
ですよ!?」
「あ、ああ・・・」
「まあいい。とにかく久しぶりに大地のトライブが揃ったんだ。今日はとことん付き合っ
てもらうからな!!」
「は!?」
「賛成!!直人さん、今日こそはじっくり親睦を深め合いましょうねv」
「おいっ!」
「心配するな。俺のおごりだ」
「きゃ〜豪さん太っ腹〜vvvさ、直人さん行きましょうv」
「行くぞ直人!!」
「ちょ、ちょっと待て・・・っ」
あれよあれよという間に直人は二人掛りで問答無用に引きずられていき・・・まるで無視
された天馬は呆気に取られたまま何も言えずにそれを見送った。
「な・・・何だありゃ・・・」
閉じられたドアに向かって思わずぽつりと呟くと、再びそのドアが開かれた。
「ただいま」
そう言って両手にスーパーの袋を下げた剣の姿に、天馬ははっと我に返った。
「お、おう!お帰り!!」
勢い声がひっくり返り挙動不審な天馬の様子に剣は眉を寄せた。
「・・・どうしたの天馬さん」
「い、いや別に・・・。博士と未加は?」
「まだ他に買うものがあるらしくて。荷物が多くなったから僕だけ先に帰ってきたんだ。
ところで天馬さん」
「何だよ」
「誰か来てたの・・・?」
先程お茶を入れようとしてそのまま放置された二つのカップを目ざとく見つけ、剣はにっ
こりと微笑んで訊ねた。
多少後ろめたいコトに及ぼうとした事実がある為天馬は一瞬ギクリと身を竦めたが、直人
の来訪自体は隠すことでもないので正直に答えた。
「ああうん、直人が・・・さ。来てたんだよ」
「へえ。でももう帰ったの?」
「ああ、何かいきなり蘭と豪が来て連れてっちまって・・・」
「ふうん」
「あれ?そういや直人の奴・・・まだ二人に帰ってること連絡してないって言ってたのに・・・。
あいつらなんでここに直人がいること知ってたんだ???」
「さあ。大地のトライブ同志呼び合ったんじゃないの」
ふと思い当たった疑問に首をかしげる天馬にさりげなく背を向け、剣はそう言いながら手
の中で携帯を操作していた。
液晶画面にはメールが一件。
送信者は蘭。
『直人さんのこと教えてくれてありがと剣ちゃんv早速豪さんと二人で拉致っちゃったv
これから3人で食事するの。じゃあね〜vvv』
内容を確認して剣はほっと息をつき、折りたたみ式の携帯をぱちんと閉じた。
(まったく油断も隙もないんだから・・・。いくら天馬さんが認めた人だからってこんな
とこでイチャつかれちゃたまんないっての!僕だってまだまだ諦めてないんだもんね)
心でそう呟きペロリと舌を出す。
その頭には細くとがった黒い角がのぞいていた。
「剣?」
急に黙った剣をいぶかしむように声をかける天馬に剣はくるりと向き直った。
すでに角の幻影は跡形もなく、かわりにその顔には誰もが見惚れる天使の笑顔が張り付い
ていた。
「何でもないよ。それより天馬さん、ケーキ買ってきたからお茶にしない?」
「え?あ、ああ」
何だか腑に落ちないものを感じつつも頷く天馬。
拉致られた直人共々、子悪魔な小姑の存在に気付くのは遠くない未来のことだった。





いや〜やっと本命CPが書けましたよ。
実は最後までヤっちゃってるバージョンも考えたんですけど
ここはあえて腹黒剣ちゃんに邪魔してもらいました。(笑)
直人が別人ですね〜はははは〜
笑っとけ笑っとけ!!(殴)


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