「荒鷲物語」
Act.1 黄

人生とは一体いつどこで何がどうなるか分からないものだ
俺の名は鷲尾岳。
子供の頃から大空に憧れ航空自衛隊に入隊し、ジェットファイターも真近だったっていう
のに・・・。
「貴方はガオイーグルに選ばれた戦士なの!」
ああいう出会いでなければどこぞの怪しいオカルト集団の勧誘かと一笑に伏したところだ。
だが現実は小説よりも奇なり。
おかげで俺は天空に消えた行方不明のパイロット。
色々言いたいことは山ほどあったがまあいい。俺は現実主義者だ。目の前の事実は事実と
して受け止めるさ。
そしてかっ飛んだ勧誘をかましてくれた姫巫女テトムに連れてこられたのがでけぇ岩、ガ
オズロック。
ここが俺の新しい居住地だってか・・・。俺は今まで俺が住んでいた世界とのあまりの違
いに改めて眩暈を起こしそうだった。
そんな俺に目もくれず、テトムは俺の腕を引いて中に入り嬉々と説明をしてくれた。
聞けばずいぶん長いこと一人でガオの戦士とやらを探していたと言う。そして俺の他にも
まだ仲間がいるのだと。
つまり当面は仲間探しが最重要課題だって訳だな。
ひと通り話し終えるとテトムは、
「じゃあ部屋はどこでも好きなトコ使って。おやすみなさ〜いv」
と去って行こうとする。
俺は慌ててその腕を掴んで引きとめた。
ちょっと待て。お前もここで寝起きするのか!?
いくら1000歳をこえるとはいえ、外見上は若い神聖な姫巫女が若い男と一つ屋根の下
二人っきりで寝起きを共にしていいのかよ!
俺がそう言うと、
「やっだぁイエローったら何考えてるの?私はこの泉から繋がる異空間にいるから何かあ
ったら呼んで頂戴。じゃ〜ね」
と笑ってテトムはホントに泉に消えていった。
恐る恐る泉に手をつけてみてもそこにはただの水しかない。
俺はどっと力が抜けてその場にへたり込んだ。
全く本当におかしなことになっちまったもんだ。今までの常識なんざさっさと捨てちまう
に限るな。
常識か・・・。
テトムには「何考えてるの?」なんて言われちまったが、俺は別にテトムに対してそんな
気があるわけじゃない。
神聖であるべき姫巫女が、戦士とはいえ若い男と四六時中一緒にいるというのはあまり褒
められたことじゃないんじゃないかと常識的に考えただけだ。
むしろ二人きりだからといって俺とテトムの間に何かある可能性は100%ない。
なぜなら俺はゲイだからだ。
別に女に嫌悪感を感じるわけでも蔑視してるわけでもないんだが、なぜか恋愛感情やら肉
体的欲求やらを感じるのは昔から同性なんだなこれが。
だから安心してくれテトム。
しかしそうか・・・しばらくは禁欲生活だな。空自の頃は、まぁゲイが多いとは言わない
がまわりは男ばっかりだったからな。大して不自由しなかったんだがな。
(←自衛隊の方本当にごめんなさい!)
まさか男漁りに行くわけにもいかんだろ。つーか別に男でなくても一緒か。戦士としてあ
るまじき行為ってやつだ。
は〜あ・・・。ほんとのほんとのほんとなんだよな。夜が明けたら夢でしたってオチには
なってくれないんだろうな。
ああさようなら、俺の平穏な日々。

Act.2 白

「本当にアレなのかテトム・・・」
「うん絶対間違いないわ!彼女こそガオタイガーに選ばれた戦士よ!」
月日がたつのは早いもので、あれから半年が過ぎた。
他にいると聞かされた仲間とやらは一向に現れず、俺は一人で戦いの日々を送り、どうに
かこうにか様になってきたものの心身ともに疲れていた。
そう心身ともにだ!
禁欲生活も半年も続けば健康な20代成年男子としては結構ツライ。
ましてや日常とかけ離れた異常な毎日の中で、禁欲どころではない、誰と触れ合うことも
なくたった一人で過ごすことがどれほどのストレスか分かるか!?
そんなわけで俺は人肌以前に人間に飢えていた。
そーゆーコトも仲間内ならいいかな・・・とか思い始めた俺を責められるもんなら責めて
みろ!
と、半分キレかけていた頃、
「イエロー喜んで!見つかったわ、ガオタイガーの戦士が!」
というテトムの言葉に俺は内心天にも昇る心地だった。
ところがだ。
テトムが泉に映した戦士の姿に俺は一瞬にして地の底に叩き落された。
どう見ても10代・・・ともすれば10代前半にも見える愛くるしい女の子。
天真爛漫な笑顔と風になびく長いストレートヘアがまぶしい。
戦士というからには全員男なのだと俺は思っていた。
今にして思えばそれは確かに偏見かもしれない。女戦士というものを考えなかった俺の思
慮不足も認めよう。
だからといってこれはないだろう!?
あんな子供がガオの戦士?今まで俺がくぐり抜けてきたような修羅場に身を置けと!?
PA(パワーアニマル)も何考えてんだ!
大体どうやって勧誘すりゃいいんだ。
「君はガオタイガーに選ばれた戦士だ。共に戦おう」とでも言えってか。
まるっきり頭のおかしい変態お兄さんではないか!!
「イエロー!!」
あれやこれやと色々苦悩して頭を抱えていた俺にテトムが切羽詰った声を掛けた。
見れば泉の中、かの少女がオルグに遭遇していた。
飛び出そうとした俺に、テトムがガオホワイトのGフォンとジャケットを差し出しこっく
りと頷いた。
仕方がねぇ・・・これも運命とあきらめてくれお嬢ちゃん!
そして数時間後。
少女―大河冴はガオホワイトのジャケットを着てガオズロックにいる。
俺のときと同様に・・・いやそれ以上に喜々としてテトムがあれこれ説明しているのを俺
は岩肌にもたれて眺めていた。
『百聞は一見にしかず』とは名言だな。
こんな非現実的なこといくら言葉を並べて説明してもはじまらねぇ。身を持って知っても
らうのが一番だ。ある意味グッドタイミングだったなあのオルグ・・・。
困惑気にテトムに相槌を打っていた少女・・・ホワイトが、俺と目が合った瞬間ぎこちな
く微笑んだ。
行きがかり上とはいえ、いきなり変身させられ戦わされたんだ。戸惑う余裕さえなかった
ろう。
その割には、武術をたしなんでいるらしくその腕と度胸はなかなかのもんだったが・・・。
でもやっぱり女の子だ。不安でないはずがない。
仲間が増えれば少しは楽になれるっていう期待は少なからずあったんだがな。ま、もうし
ばらくは俺がしっかりしねぇとな。
それにしても・・・まさか俺以外全員女だとかいうんじゃねーだろーな!?

Act.3 青

三人目はそれからさほど間をおかずして見つかった。
ガオシャークに選ばれた戦士は、まだ少年という顔つきのいかにも今時の若者といった感
じの男だった。
そう毎度毎度都合よくオルグは現れてくれず、今回は当たって砕けろで直球勝負に出た。
「がおれんじゃあ?何かよく分かんないけどいいよ。丁度今バイトやめてきたトコだし」
ちったぁ悩めよ!!
バイト感覚で話に乗るな!つーか信じてねーだろう!?
ならもうちょっと警戒しろ!薬打たれて売り飛ばされたりしたらどーすんだ!!
ったく最近の若いのは・・・。(はっ!いかん。ジジくせぇぞ俺)
あっさりと勧誘に乗ったやつ―鮫津海19歳は、ガオズロックでも興味津々で逆にテトム
に質問攻めを食らわしていた。
楽でいいといえばいいが、その神経の太さはある意味尊敬に値するぞ。
しかしこんなんで本当に大丈夫なのか?いざ戦いになったら逃げ出したりしねぇだろう
な・・・。
なんていうのは無用の心配だった。
恐いもの知らずともいえるくそ度胸と明らかに場慣れしている腕っぷしの強さはホンモノ
で、オルグとの戦闘にも全く怯むということがなかった。
こと戦闘に関しては歓迎に値する戦力だ。
PAも一応その辺考えて選んでるらしいな。
それは喜ぶべきことなんだが、極めて個人的なことを言わせてもらうとだ。
好みじゃねぇ・・・。
自分で言うのもなんだが結構好みはうるさい方なんだ俺は。男なら何でもいいってわけじ
ゃない。
ツラはまぁまぁ可愛いが、こういうこまっしゃくれたガキは好かない。
まぁ19の男を捕まえてガキってこともねぇだろうが・・・なんてとんでもねぇ!
こいつホントにクソガキだ!
やれ腹が空いただの、何々が食いたいだの。
オルグがでねぇといやあ、構え、遊べ、どっか連れてけだの!
お前はホントに19歳か!?何かカンチガイしてんじゃねーのか!!
おまけに年が近いせいかホワイトはこいつとかなり気が合うらしい。
ホワイト〜、お前まで同調してんじゃない!最初の頃のしおらしさはどこいった!?
ああもう遊びてぇなら二人で遊んでろ!俺にまとわりつくなこのガキンチョユニット
が!!
俺はガオレンジャ―になった覚えはあっても保父になった覚えはねぇぞ。
この際恋人が欲しいなんて贅沢言わねぇ。女でもかまわねぇ。とにかく俺とまともに話し
合える仲間をプリーズ!!

Act.4 黒

さらに月日がたつこと三ヶ月。
4人目、ガオバイソンに選ばれた戦士が見つかった。
傷心につけ込んだような勧誘になったが、ガタイのいい大柄な男はそれこそ世を儚んだよ
うにガオブラックのGフォンとジャケットを受け取った。
ガオズロックでテトムに説明を受けている間もなんだか上の空のようだった。
おぉ〜い・・・だぁ〜いじょ〜ぶかぁ〜???
何か誰か見つかるたびに同じ心配をしてる気がするが・・・。
PAが選んだ以上戦闘能力に心配はないだろうが、そのお通夜みてぇな暗さはどうにかし
てくれ。
失恋のショックで一時的にそうなのか、それとも根っから暗いのか。
前者であってくれ・・・そして前者ならさっさと浮上してくれ。
年齢は俺と近そうなことだし、俺は・・・俺は話がしたいんだぁぁぁぁぁ!!
ありがたいことに前者だったブラック―牛込草太郎は、浮上して元々の性格に戻ってみれ
ば温和で話の分かるいい奴だった。
戦闘に関しても、多少気弱なところはあるが元力士だったというパワーを如何なく発揮し
てくれる。
『気は優しくて力持ち』を地でいくような男だ。
何よりも面倒見がいいのでガキンチョユニットを一手に引き受けてくれるのはありがた
い!
ブルーなんぞはブラックの人の良さにつけ込んですっかり先輩気取りだ。
よくまぁあんな生意気なガキ相手にニコニコ笑って付き合えるもんだ。
ま、いいけどな。ブラックも年下に慕われてまんざらでもなさそうだし。
はぁ〜。これでやっとひとつ肩の荷が下りたぜ。
残るストレスは・・・この溜まりに溜まった欲求不満だ。
何?ブラックはどうしたって?
チッチッチッ。俺は好みにはうるさいって言っただろう。
ブラックのようなタイプは好み云々以前の問題・・・問題外の外だ。
まず勃ちゃしねぇ。
テトムの話では残る仲間はあと一人。
ガオライオンが選ぶガオレッド。俺たちガオレンジャ―のリーダーとなるべき人間らしい。
リーダーになる奴が最後の最後まで現れず、最初に見つかったというだけでおれがエライ
苦労を強いられたのはかなり納得がいかないが、ここまできたら早く見つかって欲しいも
んだ。
でもな〜。『リーダーになるべき人間』なんだろ?
なんだかな・・・こう、『逞しく凛々しい』ってなイメージが・・・。
そういうのは好みじゃないんだよな。望み薄だなこりゃ。
ガオレンジャ―も4人になったことだし、一夜限りのお付き合いでもいい。一晩ぐらい外
泊させてくれねぇかな・・・。

Act.5 赤

俺がガオレンジャーとなって一年。ついに最後の戦士が見つかった。
テトムが泉に映し出したその姿に俺は言葉をなくした。
「テ、テトム・・・」
ショックのあまりそれ以上言葉が続かず、泉に釘付けになったまま固まってしまった俺を
どう思ったのか、テトムは柔らかく微笑んでゆっくり大きく頷いた。
「なぁなぁブラック」
「ん?」
「イエローなんかおかしくない?」
「そ、そうか?」
「うん絶対おかしい。でも気持ち分かるかも。ガオライオンに選ばれた戦士って俺らのリ
ーダーになる奴なんだろ?それがさぁ・・・見てみろよ。俺の方が全然強そうじゃん。
イエローきっとがっかりしてんだよ」
丸聞こえだよ。うるせぇぞお子様。
俺がおかしいって?ああそうかもな・・・実際おかしくなりそうだぜ。
ただし失望でじゃない。俺は・・・俺は今喜びのあまりある種感動すら覚えている。
モロ好みvvv
細い体つき。長い手足。小さな顔に大きな瞳。その瞳を縁取る長い睫。通った鼻。形のい
い薄い唇。柔らかそうなクセのある髪。そして何よりも!
あの笑顔・・・v
傷ついた小動物に向けられた慈愛に満ちた、陽だまりみてぇな柔らかいあの笑顔っ。
『好み』なんて言葉じゃ足りねぇ。そう。まさに理想が服を着て歩いている!!
ああ!その笑顔で俺に笑いかけて欲しい!!
この際、ガオレッドとしての、リーダーとしての資質なんぞどうだっていい!!
何がどうでも俺のモノに・・・いやいや。ガオレンジャ―になってもらうぜ!!
てなわけで。
多少暴走気味だった俺は、ガオライオンに選ばれた青年を拉致同然、半誘拐状態でひっさ
らって、ホワイトのときに学習した『百聞は一見にしかず』に倣ってアニマリウムに放り
出してきた。
さすがはガオライオンに選ばれた戦士。
俺たちは各自守護するPAとしか心を通わせられないのに、そいつは全てのPAの声が聞
こえるようだ。
それにそいつの前に姿を現したPA達はまるでかしづいてるみてぇだ。やっぱりガオレッ
ドは特別なわけか・・・。
アニマリウムのなかでも一際高い断崖の上からガオライオンが雄叫びを上げた。
それに気づいたそいつの言葉と行動に面食らったのは多分俺だけじゃないだろう。
「赤い・・・ライオン?」
「かっ、かっこいい〜っ」
「夢なら・・・醒めんなよ〜♪」
嬉々としてそう言ったかと思うと、そいつはいきなりガオライオンのいる断崖を登り始め
た。
天然か!?
天然なのかお前は!!普通そこは「夢なら醒めてくれ〜」と恐がるところだろう!
俺たちは全員、あのブルーだってPAと対面したときはかなりビビッたんだぞ。
それなのに・・・。
く・・・っ、可愛いv
チクショウ性格まで俺のツボをつきまくりやがって!終いには腹が立ってくるぞこの野
朗!!
そうしてガオライオンとの対面を済ませた青年をテトムがガオズロックに移動させ、詳し
く説明をする暇もなくオルグが出現。
あれよあれよといきなり戦闘に担ぎ出されたわけだが、その辺はここにいる全員似たよう
な境遇だったんだ。あえて同情はすまい。
向かった先についた途端、そいつは眉をひそめ、痛みに耐えているような表情で周囲を見
渡した。
「何だこれ・・・っ。みんな・・・みんなヒドク怯えてる・・・」
驚いたな。
こいつはPAの声だけじゃなく動物や自然の声のようなものが聞こえるのか?いわゆるエ
ンパシストってやつか・・・いるもんだな。ある意味ガオレンジャーになるべくして備わ
った能力なのかもな。
大自然が恐怖している原因、それがオルグ。
そしてそのオルグを倒し、この大地に生きる命を守る力を与えられた者、それがガオレン
ジャ―だ。
そう言って俺が差し出したガオレッドのGフォンを受け取ったときのそいつの瞳は、さっ
きまでの苦痛と悲しみに満ちた色ではなかった。
戦うことを決意した、熱くて力強い、一切の邪気をなぎ払うような灼熱の色。
そこにいたのはまさに灼熱の獅子、ガオレッドだった。
こんな・・・こんな表情も出来るのか。
他には一体どんな表情を持ってるんだ?
もっと色んな表情が見たい。もっと、もっとたくさんのお前を見たい。
お前を全部・・・知りたい。
ジーザス・・・。何てことだ、俺としたことが。完全にノックアウトだ。
もう・・・止まらねぇ。
マジで、惚れちまった。

Act.6 オレンジ

あれから。
ガオレッド―獅子走は、毎日毎日およそリーダーらしからぬ天然ぶりを披露してくれた。
ガオズロックに家電を持ち込むわ、オルグの説得を試みるわ、エトセトラエトセトラ・・・。
今日も今日とて『ガオレンジャ―の心得』なんつー冊子を自作し、全員に手渡しレクチャ
ーを始めた。
惚れた弱み、痘痕も笑窪とはこのことだろうか・・・。
やることなすこと可愛い奴v
心の底からそう思っているんだが。
「勝手にやれよ。リーダー」
俺はそっけなく冊子をレッドに投げ渡し、背を向けてガオズロックを出た。
「ちょっ・・・待ってよ、イエロー!」
ホワイトが慌てて俺を追いかけてくる。
少し離れたところにある公園で足を止めると、ホワイトはおずおずと俺に声をかけた。
「イエロー・・・レッドはレッドなりに一生懸命リーダーしようとしてるんだよ?そりゃ
あイエローが今まで苦労してきたこと知ってるけど・・・あんな言い方ないよ。ねぇ、
もうちょっと歩み寄ってあげようよ」
違う。違うんだホワイト。
俺は別にあいつが気に入らないわけでも(むしろ逆)リーダーなんてもんに固執してるわ
けでもないんだ。
ただな。
俺がこうそっけなく突き放すだろ?
その瞬間のあいつの表情がたまらなくそそるんだ!
捨てられた子犬が縋るようなとでも言えばいいのか・・・うなだれる耳と尻尾が俺には見
える!
笑顔も勿論見たいが、如何せん俺の加虐心がくすぐられて仕方がない。
もっと虐めて泣かせてみてぇ!
とはいえこんなこと続けてたら俺とあいつの距離は開く一方だ。
当然俺に嫌われてると思ってるだろうしなぁあいつ・・・。
かといって突然フレンドリーに接するのも不自然だし・・・う〜ん、どうしたもんか。
ホワイトと別れてからそんな事を考えながら歩いていると、俺はカメラを手に挙動不審な
少年に出会った。
犬も歩けば棒に当たる。
ガオレンジャ―も歩けばオルグに当たる。
諺よろしく、俺はその少年経由でオルグに遭遇し、カメラに宿ったそのオルグの能力で間
抜けにも姿を奪われてしまった。
何とか皆に助けられガオズロックに戻ってきたものの、体が熱くて四肢がちぎれるように
痛ぇ。
なんてザマだ。よりによってあいつの前で!!
ちくしょう。こんなトコでじっとしてられるか。てめぇのミスはてめぇでケリつけなきゃ
カッコがつかねぇだろうが!
必死に体を起こした俺の前にレッドが立ちはだかった。
レッドはまるで俺の姿が見えているかのように、まっすぐに俺を見て言い放った。
「イエロー、俺はまだまだ頼りないかもしれない。でも信じてくれ。俺の命に代えてもお
前の姿を取り戻す!!」
言うが早いか、レッドは一人でガオズロックを飛び出していった。
レッド・・・。お前、お前って奴は・・・っ。
ああくそっ。惚れ直すどころじゃない、ますます惚れた!
「命をかけて」?俺のために?
ただの自己満足であんなにキツクあたった俺なんかのために!!
ごめんな走・・・。(←すでに名前)
今すぐにでも謝って抱きしめたい。(←いやそれは先走りすぎでは・・・)
動けないこの体がもどかしいぜ!(←自業自得ですから)
そうこうしているうちに、見事レッドは俺を含め姿を奪われた人間を解放することに成功
し、カメラオルグを倒した。
一人で突っ走った無茶に俺が嫌味を言うと、
「う・・・ま、まぁ結果オーライだよ。うん、例外もアリってことで!」
と、頭を掻きつつレッドは微笑んだ。
今だ!今しかない!!
レッドと仲直りするのに絶好のこのチャンスを逃す手はない!
ありがとうカメラオルグ。
お前というオルグがいたことは、俺と走の愛のキューピッドとして永遠に俺の心に残るだ
ろう。
そしてその日の夕刻。
俺はレッドをアニマリウムに誘った。
アニマリウム全体が見渡せる小高い丘の上、大きく枝を広げた巨木が1本だけ立っている
俺の気に入りの場所に連れてくると、眼下に広がる雄大なロケーションにレッドは目を輝
かせた。
「すまなかったな」
はしゃぐレッドの背中に俺は呟いた。
「え?何が?」
振り向いたレッドと目を合わせないように、俺は心持ちうつむいて続けた。
「今日・・・」
「なんだよ〜もう終わったことじゃないか。それに当然だろ?仲間なんだからさ」
「今日のことだけじゃない。今までその・・・色々キツクあたっちまってすまなかった。
さぞかし嫌な奴だと思っただろうな」
「な、何言ってんだよ!そんなことないって!」
「いいんだぞ。ムリせず本当のことを言ってくれて」
「だから、してないって!!」
レッドが俺の前に回り込んできて、俺の瞳をまっすぐ覗き込んだ。
おお焦ってる焦ってる。可愛いなぁこの必死の表情v
俺の自虐的な言葉や態度は勿論演技だ。レッドのこの反応を見越してのな。
「ホワイトから聞いたよ。イエローは一番最初に見つかって、半年もたった一人で戦って、
仲間が現れてからもリーダー役を担わされて、すごく大変な思いをしてきたんだって。
それなのに、俺みたいなのが一番最後に現れておいていきなり「リーダーです」じゃあ、
イエローがよく思わないの当然だと思う。でも、だからこそ俺、イエローに一番認めて
もらいたかったんだ。俺なりに一生懸命やってたつもりなんだけど、なんか空回りしち
ゃって・・・余計にイエローのこと怒らせちゃって・・・俺の方こそ、イエローに嫌わ
れてるんじゃないかって・・・」
伏目がちに独白するレッド・・・。段々語尾がか細くなって今にも泣きそうだ。
くぅ〜っ、たまんねぇ!
が、これ以上虐めちまったら元の木阿弥だ。今日からはお互いに笑顔で接するためにここ
に来たんだからな。
「がく」
「え?」
不意に呟いた俺の言葉にレッドが顔を上げる。
「“鷲尾 岳”。それが俺の名前だ」
俺はレッドを見つめながらそう言って微笑んだ。
「・・・呼んでもいいの?」
一瞬きょとんとして、おずおずとレッドが上目遣いに尋ねるのに、俺は大きく頷いてやっ
た。
レッドの顔に満面の笑みが広がる。
その笑顔は、俺が一目で落ちたあの陽だまりみてぇな笑顔だ。
くっそう辛抱たまらん!!
ここでその笑顔は反則ってもんだろう!
今すぐに抱きしめてキスして押し倒してぇ!!
「俺はかける・・・“獅子 走”。改めてよろしく、岳」
そう言ってレッドは右手を差し出した。
はっ!いかんいかん、落ち着け俺!ここで暴走してどうする。
とりあえずははじめの一歩だ。うん。
俺は差し出されたレッド・・・走の手を握りしめた。
「ああ、よろしく走」

Act.7 エピローグ

その翌朝。
なんだか久しぶりにぐっすりとよく眠った気がする。
今何時なんだ?
そんなことを思いながらもぞもぞと身支度を整え部屋を出ると、泉のある広間の方からに
ぎやかな声が聞こえた。
もう皆起きてるようだな。
走が来るまでは、あんな風に皆で集まって和気藹々と笑いあうなんてことなかったのに・・・。
天然パワーも大したもんだ。ま、いい傾向なのかもな。
起き抜けに走の笑い声を聞いて非常に心地いい気分で、俺は広間まで歩いた。
そして広間に足を踏み入れた瞬間、俺に気づいた走が声をかけた。
「あ!おはよう岳♪」
「あ、ああ。おは・・・・・っ!!」
思わず普通に返事をしかけて俺はフリーズした。
走以外の3人が絶句したように俺を見つめていたからだ。
「レッド・・・お前、今・・・」
「え?何?俺何かヘンなこと言った?」
「いや変って言うか・・・」
「レッド今イエローのこと名前で呼んだ!?」
「え?うん」
しまった〜〜〜〜〜っ!!オーマイガッ!!
か、走頼む!それ以上は・・・っっ。
「昨日イエローが名前教えてくれて、呼んでもいいって言うから・・・」
「かけるっ!!」
言わないでくれと言いたかったのに、やはり天然に腹芸は通用しないのかぁ!!
「あ〜〜〜〜〜っ!!イエローも今レッドのこと名前で呼んだ―っ!どーゆーことだよそ
れーっ!!」
うわわわわっ!つい・・・ってバカか俺は!?墓穴掘ってどうする〜っ!!
「え〜と、あれ?が・・・イエローが呼んでもいいって言ったから、もう解禁なんだと思
って俺・・・。ち、違うのか?」
違う!違うぞ走!俺はお前に・・・お前だけに呼んで欲しかったんだ〜っ!
だがそうだ。走に分かれと言う方が無理な話だ。
俺はまだ告白したわけじゃない。
俺に惚れられてるなんて当然走が思っているはずはなく、昨日はあくまでも仲間として一
歩踏み出したに過ぎない。
名前を呼ぶことに俺がどれだけ特別な思いを抱いていようと、走に分かるはずがない。
ああそうだ・・・。何を浮かれてたんだ俺はぁぁぁぁぁ!!
己の浅はかさに打ちひしがれる俺を無視して皆は勝手に盛り上がり始めた。
「そうなの?じゃあ私も呼びたい!『かけるさん』?『かけるくん』?あ、私は『冴ちゃ
ん』って呼んでv」
「何だよ他人行儀だなぁ、『かける』でいいじゃん。なぁブラック・・・じゃない草太郎v」
「え。いや、その・・・自分はどっちでも・・・」
「遠慮することないって。他ならぬイエローがいいって言ってんだからさ。あ、俺『海』
ね♪」
「あ、あのイエロー・・・いいのかな?」
「シャラーップ!!」
黙って聞いてりゃ言いたい放題・・・。
お前ら気安く俺の走の名前を呼んでんじゃねぇ!
走の名前を呼んでいいのは俺だけだ!!
「いいかよく聞け!名前で呼び合うのはやっぱり禁止だ。今後もカラーネームで呼び合う
こと!いいな!!」
「えぇ〜っ何でだよぉ。大体イエローが・・・」
「黙れクソガキ!!何ででもダメッつったらダメだダメだダメだ!!」
「ガキって言うなぁ!なぁ何とか言ってくれよレッド〜」
この野朗!走に甘えてんじゃねぇ!
う・・・走、かわいそうに。ブルーに縋られホワイトとブラックの視線までも向けられて
困りきってる。
その顔が俺のサド心を・・・って、そんなことはこの際どうでもいい。
どうでもいいが、ここで走に「解禁にしよう」などと言われるわけにはいかない。
俺は不本意ながら走を睨みつけた。
走の肩がびくっと強張る。
「あ、うん、その・・・今までカラーで呼んでたんだから今さら替えることもない・・・
よね。あはは・・・。じゃあ、今まで通りカラーネームで呼び合うってことでいいんじ
ゃないか・・・な?」
リーダーの言葉に渋々ながらブルーも納得し、ホワイト、ブラックもそれ以上追求はしな
かった。
起きたばかりだというのに俺はどっぷり疲れて、もう広間で過ごす気は毛頭なく、回れ右
して部屋へ戻ろうとした。
「イエロー!」
この声は・・・vvv
呼ばれてパッと振り向くと、声の主であるレッドが申し訳なさそうに立っていた。
「イエロー、あの、ごめん!俺・・・俺また何か失敗しちゃった・・・?」
ああ走。謝らなきゃならないのは俺の方なのに・・・なんて健気なんだv
「いや、悪ぃのは俺だ。名前を呼んでもいいって言ったのは・・・」
「うん分かってる。今までのこと水に流して最初からやり直そうって、それだけのことだ
ったんだよね」
「あ、ああまぁ・・・」
違う・・・とは言えねぇな。また話がややこしく・・・。
「でもさ。たまには呼んでもいいかな。折角教えてもらったし、仲良くなれたし・・・俺
のことも呼んでいいからさ」
かける〜〜〜〜〜vvv
愛し過ぎるぞお前って奴は!
いいとも!無論いいとも!!
「ああ」
内心の喜びは押し隠して短く答えた俺に、走は照れたように笑って「ありがとう」と言っ
て広間に戻っていった。
その背中を見送りつつ俺は溜息をついた。
単純に浮かれてはいられない。
いくら走がああ言ってくれても、走にとって俺はまだ仲間でしかない。
勿論ただの仲間で終わる気なんぞさらさらないが、相手はストレートな上キングオブ天然
だ。
変化球なんざいくら投げたってムダだろう。今回みたいになるのがオチだ。
かといってイキナリ告白して引かれたら元もこもねぇ。
この『仲間』というスタンスもなかなか曲者だ。
振られたって、嫌われたって、ガオレンジャ―やめるわけにはいかないんだからな。
ということは、コトは慎重に。かつ走に分かりやすく大胆に運ばなければならない。
・・・ってとてつもなく難しくないか?
はぁまったく・・・仲間として一歩近づけたぐらいで俺は本当に何を舞い上がってたんだ
ろうな。
オルグを倒すことよりよっぽど道は険しいぜ。
だが俺はあきらめたりしない。あきらめてたまるか。
ガオレンジャ―になって1年。
色々苦労したがそれもこれも全て走という運命の相手にめぐり合うための試練だったと俺
は思っている。
そう!俺は走に出会うためにガオレンジャーになったんだ!!
好きだ走!!
必ずこの俺の熱い想いをお前の胸に届けてみせるぜ!!

・・・to be continued・・・?

初ガオSS〜♪
浮気ブツがこんなに長くて誰か読んでくれるんだろか。
言っておきますが大半捏造です。
黄色いお兄さんが「ゲイ」ってのも
もちろん嘘ですから本気にしないように!
(誰もしないよ・・・。)


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