Lion-heart



「お前ヒマなら付き合え」
その日宝児に声を掛けられる者は誰一人としていなかった。
宝児のかつての親友がアリエナイザーとなり、ドギー・クルーガーの命を狙った。
そして。
その親友を宝児は自らの手でデリートしたのだった。
流石の伴番も掛ける言葉をもたず、帰り支度をする宝児の背中に誰をも拒絶する空気を感
じて、気にはなるもののどうすることもできずにうつむいてそのままそこを後にしようと
した。
その時突然宝児に声を掛けられ、あまつさえ信じ難いことを言われて伴番は驚いた。
そして無意識に頷いてしまって連れてこられた場所に伴番はさらに驚いた。
そこは宝児の部屋だった。
付き合えと言われたからには何処かに出掛けるのかと思っていた伴番は正直戸惑った。
なにせ状況が状況である。
しかし宝児に促されれば断る理由が見つからず、伴番は部屋に入り通された先の大きなソ
ファに腰かけた。
「お前イケるクチか」
宝児は慣れた手つきでウィスキーのボトルにグラス、ミネラルウォーターと氷を用意しな
がら伴番の隣に腰を下ろした。
「あ・・・悪ぃ俺あんま強くない・・・」
見るからにアルコール度の高そうなボトルに伴番がおずおずとそう言うと、宝児は「そう
か」と言いながら手際よくグラスに氷を放り込んで、少量のウィスキーをミネラルウォー
ターで割り伴番に差し出した。
「サンキュ」と呟いてそれを受け取り、口をつけようとしながらチラリと宝児をうかがっ
て伴番は仰天した。
宝児はウィスキーを水割りにすることはおろかグラスに注ぐことすらせず、ボトルにその
まま口をつけてあおり始めたのである。
「ちょ・・・っ相棒・・・!?」
流石に声を荒げる伴番に、宝児はボトルから口を離して言った。
「何だ」
「何だって・・・」
「俺はお前と違ってイケるクチなんだ。ぶっ倒れたりしないから心配するな。まぁもっと
も・・・普段はこんな飲み方はしないがな」
そう言ってフッと笑った宝児に伴番は言葉を無くした。
「普段はしない」ということは、今宝児は普通の状態ではないということだ。
その理由は分かりきっていて、伴番は何も言えなくなって黙り込んだ。
それからしばらく二人きりの部屋は沈黙に包まれた。
宝児は無言でひたすらウィスキーをストレートであおり、時折伴番の手の中で水割りの氷
がカランと小さな音を響かせるだけだった。
重苦しい空気の中先に口を開いたのは宝児だった。
既にボトルは空に近かった。
「お前・・・今日は静かだな」
ぽつりと呟かれたその言葉に伴番の肩がピクリと揺れる。
「いつもはうるさいくらいデカイ声でよく喚くくせに・・・今日はどうした?」
伴番は何も言わなかった。
その様子に宝児は自嘲気味に笑った。
「は・・・俺に気を使ってるってわけか?お前に同情されるようじゃ俺も終わりだな」
『同情』という言葉に反応して伴番は口を開いた。
「相棒俺は・・・!」
「相棒じゃない」
しかしそれを打って変って厳しい口調でぴしゃりと制され、伴番はハッとなってまた口を
噤んだ。
宝児は厳しい顔つきのまま最後の一口をあおった。
そしてそのまま伴番をじろりと睨みつけた。
「何か・・・言えよ」
伴番を睨んだまま宝児は唸るように言った。
「何か言え!!」
それでも何も言わない伴番に焦れた宝児は怒鳴りながら伴番の胸倉を掴み上げた。
その瞬間、抑えていた感情が爆発したように宝児は伴番に喚き散らした。
「あいつはな・・・ヴィーノはいい奴だったんだ!!刑事として確かな腕と信念を持って
いた・・・心から尊敬し合える親友だった!!誰が知らなくても俺は知ってる!それなの
に・・・っ。それなのに何でだ!?どうしてだ!?どうしてあいつは・・・っ!!技に溺
れて誇りを無くした・・・言うのは簡単だ。だが俺には信じられないんだよ!!俺にはど
うしても・・・!俺はな、心のどこかでまだ思ってるんだ。あれは・・・俺がデリートし
たのはギガンテスというアリエナイザーで、ヴィーノとは別人じゃないかと・・・本当の
ヴィーノはこの宇宙のどこかで、俺の知ってるあいつのままで、スペシャルポリスとして
生きているんじゃないかってな。そんなこと・・・あるはずないって分かってるのに・・・。
俺がこの手でデリートしたあのアリエナイザーは間違いなくあいつだっていう証拠がここ
にあるのに・・・っ!!」
そこで言葉を切った宝児が震える指で手首のバングルを握る。
つられて伴番もそこに視線を落とすが、すぐにまた掴み上げられ激しく揺さぶられた。
「馬鹿げてると思うだろう?女々しいと思うだろう?現実から目を背けて酒なんかに逃げ
て・・・情けない男だと思うだろう!?何がパーフェクト・ブルーだと・・・プロ失格だ
と思うだろうが!?ええ!?だったら何とか言ったらどうなんだ!!いつだったか・・・
いつまでもウジウジするなとこの俺を蹴り飛ばしたあの時みたいに掴みかかってきたらど
うだ・・・っ!!」
肩で息をしながら自分を睨み据える宝児を伴番はまっすぐに見つめた。
唇を噛み、眉を寄せ、それでも視線をそらさない伴番の大きな目に逆に居たたまれなくな
って宝児は俯いた。
「何か・・・言え・・・」
搾り出すように宝児は小さく呟いて、指先が震えて白くなるほど強く握り締めたままの伴番
の胸元に額を押し付けた。
「何か言ってくれ!!」
宝児がそう叫んだのを最後にまたしばし沈黙が続いた。
しばらくして、伴番はゆっくりと腕を上げ、自分の胸に突っ伏した宝児の頭を柔らかく抱
きしめた。
予期しない伴番のその行為に宝児の肩が強張った。
「ごめん・・・」
伴番の言葉に宝児は目を見開く。
「ごめんな・・・」
伴番は静かに続けた。
「俺、何も言えなくて・・・何もしてやれなくて・・・ごめん・・・」
それは励ましでも慰めでも叱責でもなく。まして否定や拒絶でもなく。
伴番はただ受け止めていた。
行き場のない宝児の思いの全てを。
怒りも悲しみも悔しさも。
そしてそんな内に渦巻く感情を己の中で昇華できずに伴番にぶつけてしまった弱さも。
紡がれた言葉とまわされたその腕のぬくもりに何もかも許された気がして、見開いたまま
の宝児の目から無意識に涙がこぼれ落ちる。
そして。
「う・・・う・・・っ、うああああああああ・・・!」
胸に込み上げる熱に耐えかね、宝児は伴番の体をきつく掻き抱いて声を上げて泣いた。
泣いて泣いて泣いて・・・。
先に摂取した強度のアルコールの影響もあってか、宝児はそのうち泣き疲れるままに眠っ
てしまった。
完全に眠りに落ちても伴番の服を掴んで離さなかったその手をやんわりと解こうとして、
伴番は手を止めた。
宝児の腕で鈍く光るバングル。
不意に指先に触れてしまったそれに、伴番はきゅっと唇を引き結んだ。
そして、自分に抱きつくような格好で眠る宝児の赤く腫れた寝顔を見つめながらふと呟い
た。
「俺・・・がんばるからな、相棒・・・」
それから。
伴番は宝児の手を解くことなくそのまま自分も目を閉じた。





うちのホージーはへタレ一直線ですね〜・・・(遠い目)
赤青臭いですけど私的にはこれでもちゃんと青赤です
八つ当たりするホージーと受け止めてあげるバンちゃんが
書きたかったんです
地元では2ヶ月くらい放送が遅れてるので
本放送とリンクするネタは
常に皆様がやり尽くしたあとで書くことになるわけで
どこかで見たことあるな〜と思われても目を瞑ってやって下さい(笑)
(良心に誓ってパクルなんてしませんから!!)


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