| Accident Kiss |
「おい、まだか」 「そんなに急かすなよっ!結構やりづらいんだからっ!」 「まったく。電灯の付け替えも満足に出来ないなんて不器用な奴だ。プロ失格だな」 「なんだとーっ!!プロ云々は関係ないじゃんかっ!そんなに言うなら相棒がやれよ な!」 「相棒じゃない!ジャンケンで負けたのはお前だろ」 「うぐ・・・っ」 「ふん。いいから早くしろ。仕事にならないだろうが」 「うう〜くっそ〜っ!覚えてろよーっ!!」 デカベース内にあるデータルーム。 さして広くもない空間にいつもの如くけたたましい二人の声が響く。 特に事件もない本日、伴番と宝児の二人はデータ整理を割り当てられた。 方や苦手なデスクワークに、方や組まされた相手の人選に文句を言いつつも二人してデー タルームに赴いてみれば、天井の明かりが断末魔の明滅を繰り返していた。 そこで一勝負の末、現在伴番は脚立の上、宝児はそれを腕を組んで見上げながら先の会話 と相成ったわけである。 「よっしゃオッケー!相棒点けてみて・・・うゎっ!?」 新しい電灯を付け終え宝児へと振り向いた伴番は勢い脚立の上でバランスを崩した。 「バン・・・ッ!?」 空中に傾ぐ伴番の姿を目にして咄嗟に宝児は側へと駆け寄った。 が、時既に遅く。 ガタガタンッ!! ドサッ!! 派手な音を立てて脚立は倒れ、あわれ伴番は床へと落下。 したはずだった。 「・・・・・っ!!」 床に叩きつけられる落下の衝撃を覚悟して伴番は目を閉じて身構えていた。 しかし待てど暮らせど一向に痛みは襲ってこない。 むしろ体の下は何だか柔らかく、おまけに何故か唇の辺りが温かくて息苦しい。 「???」 不可思議な感触に伴番は恐る恐る目を開いた。 「!!?」 そこには大きく目を見開いた宝児の顔があった。 それも近すぎて視界がぼやけて、それが宝児なのかどうかも一瞬迷うほどありえない至近 距離で。 瞬きすれば互いの睫が触れ合いそうで、それを意識した瞬間、伴番は自分たちの状況を悟 った。 要するに宝児は落ちた伴番をかばってその下敷きになり、その際似たような背丈の二人が 縦に重なり合った為偶然にも唇と唇が・・・。 「うっわ!!相棒ごめん!!」 事故とはいえクッションよろしく下敷きにしたうえ、あまつさえ唇を重ねてしまった。 自分は男で同じ男である宝児がそれを良しとするはずがないという思いで、伴番は咄嗟に 謝罪の言葉を口にして顔を離し、宝児の顔の脇に両手をついて上から飛び退こうとした。 ところがその瞬間、宝児の腕が起き上がろうとした伴番の腰を抱きしめるようにがっしり と掴んだのである。 「へ?」 驚いて思わず伴番が宝児を見下ろすと、宝児は無言のままじっと伴番を見つめていた。 「あ、あの・・・相棒・・・?」 自身の体重を両腕で支えながら戸惑う伴番の腰を片手で抱いたまま、宝児は余ったもう片 方の手をゆっくりと持ち上げた。 「・・・・・・」 確かめるようにその手の平で伴番の頬に触れ、やんわりと何度もそこを撫でる。 そして長い親指の先で薄く開かれた唇をなぞった。 「ん・・・っ」 まるで愛撫のような宝児のその行為に、伴番は小さく声を上げてびくりと身を竦ませる。 それを合図にして、宝児の手が伴番の顔を固定するように止まり、腰を抱く腕に力が込め られた。 宝児の目が細められ、吸い寄せられるようにその体が浮き上がる。 「あ、あいぼ・・・」 スローモーションで近付いてくる宝児の整った顔に、伴番の胸はわけもわからないまま無 意識に高鳴り、焦りはすれどもどうしようもなくて伴番はぎゅっと目を瞑った。 その瞬間。 どんっっ!! 「・・・っ!!いって〜〜〜〜〜っっ!!」 伴番は思いっきり胸を突き飛ばされ床に転がった。 その拍子に壁にしたたか頭を打ちつけ、伴番は涙目で頭を抱えた。 「何すんだよっ!!」 伴番は突然理不尽な暴力を受けて、その加害者である宝児を憤然と睨み上げて怒鳴った。 床に座り込んだ伴番に対して宝児はその前に仁王立ちになり、先程までとは位置関係が逆 転していた。 宝児は首まで真っ赤にしてそんな伴番を見下ろし負けんばかりの勢いで怒鳴った。 「いつまでも上に乗ってるからだ!重いんだよっ!!」 「なっ!そ、それは相棒が・・・っ!」 「うるさい!!相棒って言うな!!」 「あ!コラ待て!!どこ行くんだよっ!?」 「黙れ!ついて来るなっ!!」 憤りのおさまらない伴番を尻目に宝児は逃げるようにデータルームを出た。 実際逃げたのである。 足早に手近な空き部屋に飛び込むなり宝児はその場にへたり込んだ。 (お、俺は・・・俺は今何を・・・っ!?) ドクンドクンと耳障りなほど早鐘を打つ心臓を宝児は服の上から押さえつけた。 すると今度は口から飛び出てきそうで慌てて口を手の平で覆う。 そうしている間にもまざまざと思い出される伴番の感触に止まることなく顔に熱が集中し た。 抱き止めた体の思いがけない軽さとそのぬくもり。信じられないほど細い腰。真近で薫る 体臭と唇に感じた熱・・・。 それらを享受した瞬間に宝児の意識は弾け飛んでいた。 離れようとする伴番を抱き寄せたのも頬を撫でて唇に指で触れたのも全て無意識で、気付 いた時には固く目を閉じた伴番の顔が目の前にあって、驚愕のあまりつい宝児は伴番を突 き飛ばしてしまったのだった。 自分の行動を思い出すにつけ、宝児は自分で自分が信じられなかった。 (そんな・・・そんなバカな・・・。男に・・・しかもよりによってあいつなんかに・・・ っ!嘘だ。そんなはずはない。これは何かの間違いだ。気の迷いだ。俺は・・・俺は違う んだ〜〜〜〜〜っ) 捨てられぬ山より高いプライドゆえに一人悪足掻きに身悶える宝児だった。 一方。 「くっそう、何なんだよもうっ!」 宝児に振り払われた伴番はそれ以上追うことも出来ずに浮かせかけた腰をまたどかっと床 に落として座り込んだ。 壁にもたれて行き場を無くした怒りを大きく深呼吸することで発散する。 気分が落ち着いてくると、徐々に先程の明らかに普通ではなかった宝児の様子が思い出さ れてきた。 何がどうしてそうなったのかは分からないがもしも。 もしもあの時宝児が正気に戻らなかったら・・・? ふとそんなことを思い無意識に指が唇をなぞっていたことに伴番ははっとして思い切り赤 面する。 慌ててごしごしと袖で口をこすりながら、伴番はぽつりと呟いた。 「相棒って・・・時々分かんねー・・・///」 |
いい加減諦めて認めてしまえ
ホージー・・・。(笑)
ちなみに今回のネタは体験談ではないです。
いくらなんでも・・・ね。(笑)