Don't cry baby  -緑赤Ver.-



「なぁセンちゃん」
「ん?何?」
「まだ終わんないの?」
「あ〜・・・うん、ごめんね。あともう少し」
ここは地球署署員に各々あてがわれている独身寮の一室。
SPD・江成仙一の部屋。
カーペット敷きの床の上でクッションを抱え体育座りした姿勢で上目遣いに様子をうかが
う伴番に、仙一は目の前のディスプレイを見つめたままキーボードを叩きながらそう答え
た。
「何か急いでる仕事なの?」
「ん〜そういうわけじゃないんだけど・・・。ほら、ここのとこ出動が多かったじゃない。
おかげでデータ処理が溜まっちゃっててね〜。ここらでちょっとやっつけとかないと後が
大変になりそうだから」
言いながら凝った肩をほぐすように大きく伸びをする仙一に伴番はぽつりと「そっか」と
呟いた。
それを耳にして仙一は伴番の方に向き直り、心底申し訳なさそうに言った。
「ほんとゴメンね。せっかく来てくれたのに・・・なるべく早く終わらせるから・・・」
「ああ、いいよいいよ!俺が勝手に来たんだもん。俺、邪魔しないようにあっちで一人で
遊んでるからさ。がんばってな!」
仙一の言葉尻を遮るように伴番は慌てて立ち上がり、手を振りながら笑顔を浮かべてそう
言うとそのまま部屋を後にした。
閉じられたドアのパタンと軽い音に笑顔とは裏腹な伴番の気持ちを思い、仙一は気合を入
れ直してディスプレイと向かい合った。

部屋を出た伴番は隣あっている寝室へと移動し、勝手知ったるベッドに横になった。
しばらくはベッド脇にある棚にズラリ並んだ仙一所有の文庫本をあさってパラパラめくっ
てみたりしていたのだが、元々読書家ではない伴番はすぐに飽きてしまい長くは続かなか
った。
手持ち無沙汰になった伴番は大きく息を吐きながら仰向けに寝そべり天井を見上げた。
(まだ・・・かな・・・)
チラリと隣に繋がる壁を横目で見て、そこにいる仙一を思い伴番の胸はちくりと疼いた。
(あ〜あ。何で今日に限って仕事してるかなぁ。ていうかセンちゃんもさ〜・・・せっか
く俺が来てんだから早めに切り上げるぐらいしてくれたってさ〜・・・)
なかなか構ってもらえないことに焦れて、我侭だと分かっていつつもついつい心の声に本
音を滲ませてしまう伴番であった。
毎日顔をあわせるとはいってもそれは職場で仕事上でのこと。
二人は仲間であると同時に恋人同士でもあるのだから、プライベートでの二人の時間をも
っと密に過ごしたいと・・・そんな風に伴番が思うのもそれは無理からぬことで。
思い切って行動に移してみたところが、微妙に思惑すれ違ってしまった現状を前に伴番は
少々凹んでいた。
「アッチの方も・・・随分ご無沙汰だしさ・・・」
思わず声に出してそう呟いて伴番は一人赤面した。
実のところ、この日仙一が仕事中であったにもかかわらず、伴番が強引に仙一の部屋に押
し掛け上がり込み居座っていたのは少なからずそれも期待してのことだった。
『スペシャルポリスの辞書に暇という文字はない』の言葉通り毎日毎日とにかく忙しく、
おまけに非番や遅番といったシフトがそうそう自分達に都合よく回るわけもない中、ゆっ
くりと会う時間さえままならないのでは当然夜の生活もままならないわけで。
恋人を持つ身で心身ともに健康な成人男子である伴番は身も心も欲求不満なのであった。
「センちゃん・・・」
小さく名前を口にするとますます切なくなって、伴番は頭から布団を被ってベッドの中へ
潜り込んだ。
すると。
(あ・・・センちゃんの匂いだ・・・)
ぬくもりと共にベッドに染み付いた仙一の残り香を強く感じて、伴番は無意識に胸を高鳴
らせた。
陶然と目を閉じて鼻先をシーツに擦り付け何度も深呼吸を繰り返す。
(こうしてると・・・なんかセンちゃんに抱きしめられてるみたい・・・)
そう思った瞬間、背筋がぞくりと粟立って伴番は息を詰めた。
(・・・っやば・・・っ!)
覚えのあるその甘い感覚に伴番が戸惑う間もなく、一瞬でスイッチが入ってしまった体は
本人の意思を無視して急速に熱を持ち火照りだした。
(わ、わ・・・どうしよっ。まずいよこんなとこでこんな・・・!と、隣にいるのに・・・!)
己を戒める為に壁一枚隔てた隣の部屋に仙一がいることを意識しようとして伴番は墓穴を
掘った。
脳裏に描いたのはデスクに向かう仙一の姿。
淀みなくキーを打ち、時折何事か考え込むように顎を撫でるその長い整えられた指先・・・。
「あ・・・」
その指が。
どんなに器用に肌を滑って自分を煽り昂ぶらせるか伴番は知っている。
「セン・・・ちゃん・・・」
恋しいその名を呼んで吐き出した吐息は熱を帯びて震え、箍が外れた伴番は体を丸めなが
らゆっくりと自分の掌をシャツの中へと潜り込ませた。
「ん・・・は・・・」
いつも仙一が辿る指先のラインを思い出しながら片手で肌を弄り、もう一方の手を口元へ
と運び指を口内に差し入れ口づけをねだるようにそこに舌を絡ませる。
「ふ・・・うん・・・っ」
指先が胸の飾りに触れるとそこは既に固くしこっていて、素直すぎる己の体の反応に伴番
は羞恥を感じてますます煽られていった。
(あ、あ・・・ダメ・・・ダメだって・・・)
心の中でそう繰り返しながらも手は胸元から腹を滑り降り、閉じた両足の間に潜り込む。
ジーンズの硬い布を押し上げている欲望を押さえつけるようになぞればもう歯止めは利か
なかった。
口内を弄っていた手もそこから抜き去り、両手で慌ただしくベルトを外しジーンズの前を
くつろげ直に欲望に触れる。
「はあぁ・・・っく・・・っ!」
途端に体中に走った快感に思わず声を上げて喘いでしまい、伴番はハッとなって着ている
シャツの裾を口に銜えた。
そうやって声を殺しながら伴番は唾液に濡れた指を滾る欲望に絡ませ夢中で梳き始めた。
仙一のベッドで、仙一の匂いに包まれて、仙一の指を思い出しながら、仙一を想って。
「んん・・・んぐ・・・んんう・・・!」
(センちゃん・・・センちゃん・・・センちゃん・・・!)
先端からとめどなく溢れる蜜が次第に白く濁り始め、後もう少しで頂点まで上り詰められ
るというその瞬間。
カタン。
「!!」
徐に聞こえたドアの開く音に伴番は目を剥いて固まった。
「バン・・・?」
続いて聞こえたその声に思わず答えた伴番の声は焦りの為に派手に裏返った。
「セ、センちゃん?」
「良かった。寝ちゃってるのかと思った」
仙一はほっとした口調でそう言うとドアを閉めてそのまま真っ直ぐベッドへと歩み寄りそ
の端に腰を下ろした。
仙一の重みを受けてギシリと音を立てて揺れたベッドに、びくっと身を強張らせた伴番の
全身にダラダラと嫌な汗が流れた。心臓は今にも飛び出さんばかりの勢いでバクバクと跳
ねている。
なぜならば。布団の中で丸まった格好の伴番の欲望はこの状況にも萎えることなく張り詰
めたまま、伴番の手はそこを握り締めて離せないままだったからである。
「え・・・と、も、もう、終わった・・・の?」
生唾を飲み込みつつ伴番は何か言わなくてはと声を絞り出した。
「いや実はまだなんだけど・・・ダメだね〜俺。バンが待ってるって思ったらいても立っ
てもいられなくってさ。やめてきちゃった」
苦笑混じりに、けれど優しい声でそう言われて伴番は嬉しくなった。
しかし、それに体も顕著に反応し手の中の欲望が脈打ち伴番は焦りまくった。
「そ、そうなんだ。あ、で、でももういいよ。俺のことは気にしないでいいからセンちゃ
ん、仕事終わらせてきなよ」
「え?」
予想外の伴番の言葉に仙一は目を見開いた。
仙一とて愛する恋人の来訪が嬉しくないわけでは決してなかった。むしろ気持ちは伴番と
同じ。
どんなに集中しようとしても、確かにそこにいるはずなのに静まりかえるばかりの隣室の
様子が気になって仕方なくて、寂しい思いをさせていることに居たたまれなくなって仕事
を中途で切り上げた。
きっと伴番も喜んで迎えてくれるだろうと思っていたところに突き放すような物言いをさ
れて仙一は戸惑った。
「バンどうしたの?どうしてそんな・・・。それに何でそんな布団被っちゃってるの?ど
こか具合でも悪いの?」
心配げにそう言いながら、伴番がひき被った布団に仙一は手をかけた。
その途端伴番は飛び上がらんばかりに慄き布団を体で必死に押さえつけた。
「や・・・っ!い、いいから!何でもないからあっち行って!!」
とっさにそう喚いた伴番の言葉に仙一は今度こそ信じられない思いで息を呑みうなだれた。
「怒ってるの・・・?俺がバンを放っておいて仕事してたから・・・?」
すっかり誤解させてしまった仙一の力ないその声に伴番は内心激しくうろたえたがかとい
って否定するわけにもいかず、結局伴番は何も言えずにただ黙り込んだ。
「分かった・・・」
伴番の沈黙を肯定と取ったのか、やがて仙一は溜息と共にそう呟いてベッドから腰を上げ
た。
その気配に伴番が不本意ながら安堵に気を弛めたまさにその時。
「よっこらせ!」
「ひ・・・っ!?」
狙いすましたかのように一気に布団が剥ぎ取られ、伴番は心臓が止まりそうな勢いで再び
硬直した。
「あ・・・・・」
「〜〜〜〜〜っ」
曝け出された光景に仙一は目を丸くして絶句し、今さら隠すこともできない伴番は見られ
た羞恥に顔を真っ赤に染めて固く目を閉じ唇を噛み締めた。
あられもない伴番のその姿に全てを悟り、しばし無言で伴番を見つめていた仙一が不意に
動いた。
「バン」
伴番の体の脇にそっと手をつき柔らかく髪に触れ、耳元に名前を囁く。
伴番は仙一のその声に小さく身震いして、居たたまれなさそうに眉を下げたまま恐る恐る
目を開いて仙一を見上げた。
そんな伴番の視線の先で仙一は目を細めニッコリと笑った。
「『一人で遊ぶ』っていうのは・・・こういう意味だったの?」
明らかに揶揄かっている仙一のその口調と表情に伴番は目を見開き、衣服の乱れもそのま
まに首まで赤くして仙一に掴みかかった。
「バカバカバカッ!センちゃんのバカぁっ!!」
「痛・・・っ!痛いよバン!」
ぽかぽかと拳で叩いてくる伴番をおどけた調子でかわしていた仙一だったが、伴番の目か
ら大粒の涙がこぼれているのを見て、仙一は伴番の体にやんわりと腕をまわした。
「バン・・・?」
そっと呼びかけると伴番は仙一に縋りつきながらしゃくり上げた。
「お、俺をこんな体にしたのはセンちゃんなんだから!俺がこんなヤラシイ体になっちゃ
ったのはセンちゃんのせいなんだから!なのに・・・なのにセンちゃんってば俺のこと放
っといて・・・。全部センちゃんがいけないんだから・・・っ!」
泣きながら全身で寂しかったのだと訴える伴番に愛しさが込み上げ、仙一は伴番を胸にき
つく抱きしめた。
「うん・・・そうだね、ごめん。ごめんね?」
伴番が泣きやむまで繰り返しそう囁いて、何度も背中を撫で髪や耳元にキスを落とした。
腕の中で身動ぎするのを感じて仙一が腕を弛めると、伴番は泣き腫らした赤い目で恥ずか
しそうに仙一を上目遣いに見つめた。
「センちゃん・・・」
甘えを含んだその声と潤んだ大きな瞳に吸い寄せられるように仙一は唇を寄せ、伴番は目
を閉じた。
向かい合って抱き合いながら口づけ、唇を離した後額をくっつけ合って、どちらからとも
なく照れ臭さから笑いがこぼれた。
「本当にごめんねバン、邪魔しちゃって。俺のことは気にしないで遠慮なく続けて」
「は?」
やがて真顔でそう言った仙一に伴番はきょとんとして小首を傾げた。
そんな伴番に仙一は人の悪すぎる笑みを浮かべてのたまった。
「だってまだイケてないんでしょ?」
そしてさらにあろうことか下肢に手を伸ばしてきて、仙一の言わんとするところを悟った
伴番は湯気が出そうなほど一気に全身を朱に染め上げた。
「な、なな、何言ってんだよセンちゃんっ!!」
思わず股間を隠して仙一から後退さるも仙一はニコニコ顔のまま顔を寄せてきて、さりげ
なく逃げ道を塞がれて伴番は泡を食って喚いた。
「お、俺が言いたいのはそういう事じゃなくて・・・!」
「分かってるよ〜。勿論後でしっかり責任とってあげるけどせっかくだしv俺、バンが俺
のこと考えながら一人でシテるとこ見たいな〜vvv」
「せっかくってなんだよ!センちゃんのヘンタイ!!」
「またまた〜そんな俺が好きなくせに〜♪」
「う・・・っわ〜ん!センちゃんのアホ〜っ!!」
惚れた相手が悪いのか、甘いムードはどこへやら。哀れな伴番に幸多かれ。





2005年に某緑赤の御大様の主催で発行された
デカ緑赤アンソロにて寄稿させて頂いたモノですv
寄稿ブツなのでアップを自粛してたんですが
流石にそろそろいいかな〜と思いまして。
2年越しでようやく攻3色(笑)揃い踏みと相成りました♪


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