OH MY GOD



7月7日、晴れ。
本日の業務プラス残業を終えた俺は、何となくそのまま帰宅する気になれなくてデカベー
スの屋上に上ってみた。
見上げた夜空は満天の星空。
梅雨時の間隙を縫うように今夜の空は見事に澄み渡って雲ひとつなく、天の川さえ瞬いて
見える。
ホントなら自分の誕生日にこんな綺麗な星空を拝めるなんて、それだけで晴れやかな気分
になるところなんだろうけど俺はかえって何だか切なくなった。
だって君がいない。
今この瞬間、一番近くで一緒にこの星空を眺めたいと願う最愛の恋人は、皮肉にもこの星
空の彼方。
七夕物語の織姫と彦星は、恋をしてお互いにのめり込むあまりに周りが見えなくなり、そ
の結果自分たちのやるべき仕事をおろそかにしてしまったが為に神様の怒りを買い、離れ
離れにされてしまった。
でも俺たちは違う。
俺たちは自分たちのやるべき仕事、そして夢を見失なうことなくしっかりと追いかけ全う
する為に自らの意志でこの道を選び、お互いに頑張っているわけで。
この選択を悔いたことなんてただの一度もない。
たとえ離れてもお互いの想いはいつでも深く繋がっていることを確信しているから。
とはいうものの。
こんな日に姿はおろか声も聞けないのは流石にちょっと寂しい。
何せあっちはこちらに輪をかけて特殊な任務で常時宇宙中を飛び回っている身の上。
居所がはっきりしないなんてこともしばしばで、そう簡単には連絡も取り合えないんだも
んね〜。
正直キツイよ結構・・・。
自業自得で離れ離れになった織姫と彦星だって年に一度、七夕の日には会えることが約束
されてるわけじゃないですか。
なのに俺は自分の誕生日に声も聞けないなんてあんまりじゃないですか?神様。
はぁ、俺の織姫は今頃一体どこでどうしているのやら。
なんてね。
意外と寂しがりでポエマーな自分の新たな一面を発見してますます凹んでいると、星空に
一筋の流れ星が走った。
なんて徹底してロマンティックなシチュエーション。
ここまでくるともう神様の嫌がらせだとしか思えない。
腹いせに俺は柄にもなくその流れ星に願った。
この際思いっきり大きな声を張り上げて。
「俺はぁ!バンに会いたいんだ―――――――っ!!」
デカベースという巨大な建造物の上から叫んだところで誰に聞こえるわけもないんだけど、
少しばかりはスッキリしたもののそれを上回って恥ずかしくなった。
居心地悪くひとしきり俯いて頭を掻き咳払いなどしつつ顔を上げるとあにはからんや、流
れ星はまだ健在だった。
こんなに長く光ってるなんて・・・彗星かな。
でもそんなものが地球に接近してるなんて情報はなかったはず・・・。
そんなことを思いながら見つめていると、気のせいか流れ星が段々近付いてくるような気
がした。
いや・・・気がするんじゃない。
近付いてくる!?
ぐんぐん・・・ぐんぐん・・・真っ直ぐこのデカベースに!!
俺は慌てて身を翻し屋上を後にした。
あんな明らかな未確認物体の接近を感知してない筈はないのに何故エマージェンシーコー
ルが鳴り響かないのか不思議に思いながらも、俺はデカルームも素通りして一目散にデカ
ベースの外に出た。
デカベースの前方は様々なマシンの発進やデカベースクローラーの起動に備えて滑走路状
に長く広い路面が敷かれている。
それを利用して地上へと着陸しデカベースの前で停止した未確認物体、即ち流れ星の正体
は、真紅のボディに黒いラインの超光速小型宇宙艇だった。
そのカラーリングに俺の目は釘付けになり、心臓が高鳴った。
この色はファイヤースクワッドの。
ということは、これはファイヤースクワッド専用機ということで。
ということは・・・ということは・・・っ。
吸い寄せられるようにふらふらと近づく俺の目の前で宇宙艇のハッチがゆっくりと開く。
「センちゃーん!たっだいまーっ!!」
ハッチが開き切るのを待たず飛び出すようにコックピットから身を乗り出し、満面の笑み
で大きく手を振るその姿は。
夢にまで見た恋人の姿。
「バン・・・っ!」
思わず叫んで駆け寄った俺めがけてマシンから飛び降りたバンを、俺は胸にしっかりと抱
き止めた。
夢じゃない。本当にバンがここにいる。
「ただいまセンちゃん。遅くなってごめんな」
「え・・・?」
「え?って?センちゃん俺のこと待ってて出迎えてくれたんじゃないの?」
「いや出迎えるも何も・・・。俺は一体何がどうなって今バンがここにいるのか正直パニ
ックなんだけど」
「え〜?俺がこの日に休暇とって帰ること、ギョクさん通じてちゃんとデカベースに連絡
しといたはずなんだけど」
「は!?何でデカベースに!?」
「だってバリヤー解除しといてもらわないと地球に入れないしさ。それにココにでも置か
せてもらわなきゃこの船置き場所に困るじゃん」
俺はその時たまたまその場にいなくて。バンはそれを知らなくて。
何でギョクさん経由で事前連絡を入れたかってそれはバン自身が忙しくて自分で出来なか
ったからで。
結局その後も忙殺されてた(きっと他ならぬ休暇の為だろう)バンに俺に個人的に連絡を
する余裕はなく、結局バンはデカベースに連絡をしたことで俺にもちゃんと伝わってると
思い込んでいたらしい。
まぁ当然といえば当然だ。
てことは皆知ってて俺に内緒にしてたわけか・・・。ことによったらギョクさん辺りも一
枚噛んでそうだよね。
くそぉやられた。
どおりでエマージェンシーコールも鳴らなければ誰も慌てふためいて出てきたりしないわ
けだ。
事の真相にがっくりと肩を落として脱力する俺の頭をバンがぽんぽんと叩いた。
「まぁまぁセンちゃん。きっとサプライズのつもりで皆センちゃんをビックリさせてやろ
うとか思ったんだよ」
「まぁね。まんまと驚かされたよ」
ニコニコと笑うバンに苦笑しつつ、俺は改めてバンを抱きしめた。
「お帰りバン」
「うん」
「いつまでいられるの?」
「何事もなければ明日の夜までかな」
短い。しかし実際バンにとってほぼ丸一日の休暇なんて奇跡みたいなものなんだから我侭
言っちゃいけない。きっと死に物狂いで取ってくれたに違いない。
「そっか、何事もないことを切に願うよ。久しぶりに皆にも会いたいよね」
「うん、会いたい」
本当は短い逢瀬なんだからずっと独占していたいけど、バンは俺のバンであると共に皆の
バンだから。でもせめて・・・。
「じゃあ・・・今夜はこのまま思い切り独り占めしていい?」
「うん・・・」
照れ臭そうに頬を染めながらもこくんと頷いて、強く俺を抱きしめ返してくれたバンに触
れるだけのキスを送って。
歩き出そうとした俺の手を不意にバンが握った。
振り向いた俺にバンは言った。
「誕生日おめでとう、センちゃん」
その声も微笑んだその表情も、頭上に広がる星空が霞むぐらい眩く綺麗で。
ああ神様。
色々と文句言ってほんとーにごめんなさい。
これ以上はない最高のプレゼントをありがとう。
これからも頑張ります!!





最終回以降のお話としてはお初です〜。
遠距離恋愛にちょっとおセンチに
なられている緑様ということで。(笑)
たまにはこんな緑様もありかなと。
何はともあれハピバースデイなのです♪


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