Perfect Blue



俺の名は戸増宝児。
警察学校をトップの成績で卒業し、プロとしての実績もナンバーワン。
自分で言うのもなんだがいわゆるエリートだ。
仕事はクールにスマートにパーフェクトに。
それが信条のこの俺がここのところ調子を狂わされっ放しだ。
原因は最近やってきたあの直情型熱血バカだ。
何度言うなと言っても人を『相棒』呼ばわりしてついて回りやがってうっとうしいことこ
の上ない。
なのになぜか周りは俺とあいつを『いいコンビ』などと称して生温かい目を向ける。
しかもあいつをいたく気に入ってるらしいセンの奴は何か知らんが妙なちょっかいを掛け
てくるようになった。
何故だ。全く持って不本意だ。
俺はあんなバカこれっぽっちも認めちゃいない。
あんな奴がこの俺にふさわしいわけがない。
俺はあいつのことなんか何とも思っちゃいないんだ!!
そんなことを思いながらデカルームの前まで来ると、中で何やら話し声が聞こえた。
この声は・・・センとあいつか?
何だってこんなに声を潜めて喋ってるんだ?
立ち聞きなんてするもんじゃないとは思うものの、ドアの向こうの妙な緊張感をはらんだ
ただならぬ雰囲気が気になって思わず足が止まる。
そして俺は我知らず耳をそばだてていた。
「ちょ・・・待ってセンちゃん・・・っ」
「大丈夫。恐くないからじっとしてて」
「けど・・・」
「バン・・・もしかして初めて?」
「う・・・」
「そっか・・・うん。じゃあ優しくするから・・・ね」
な・・・何なんだ今の会話は!?
『初めて』って何が!?
会話の流れからするとまさかとは思うが答えはひ、ひとつしか・・・っ。
そうか・・・バージンなのか・・・って何考えてんだ俺は!?当り前だろうが男なんだか
ら!
いや違うだろ。そうじゃないだろ根本的に!!
そんなことはどうでも・・・よくない気もするがこの際どうでもいいとして、あいつらい
つの間にそんな関係に!?
つーかこんな白昼堂々、天下のデカベースで何をやってるんだ!!
「うわ、わ!タンマ!やっぱいい!やめる!!」
「あのねぇバン。このままだと辛いだけでしょ」
「そりゃそうなんだけど、さ〜」
なんだ嫌がってるじゃないか。
センの奴ちょっと強引じゃないのか?
それにしてもあいつ・・・あんなに俺に懐いて回ってたくせにあれは一体なんだったんだ。
センもセンだ。こんなに手の早い奴だったとは・・・。
くそっこの俺を差し置いて・・・ってだーかーらー違う!!
あの二人がホモろうがどうしようが俺には関係ない!
俺はただTPOをわきまえろとだな!
ここをどこだと思ってるんだお前ら!!
「恐かったら目閉じてていいよ。だから俺に任せて。ね?」
「う、うん・・・」
「じゃ、いくよ・・・」
お、おい本気か?
本気で今ここで・・・!?
冗談じゃない!このまま手をこまねいていてはあいつのバージンがセンに奪・・・っ、い
やだからそうじゃないだろ俺っ!!
そうだこれだ・・・神聖なデカベースが汚れるっ!!
「痛っ!センちゃんダメ!やっぱ痛ぇって!!」
「最初だけだよ。すぐ楽になるから力抜いて・・・」
「うぁ・・・っ」
うわあああああああああっっ!!
聞くに堪えん!!
ええいだめだ!!黙って見過ごせるかぁぁぁっ!!
俺は視界に入るであろう二人のあらぬ姿を見たくなくて固く目を閉じたまま勢いよくドア
を開け放った。
「やめろ!!お前ら真っ昼間から職場で不謹慎だとは思わないのか!?そんなふしだらな
行為・・・誰が許してもこの俺が許さーんっ!!」
「はい。取れたよバン」
一息にそう捲くし立てた直後、その場にそぐわないセンのノホホンとした声が耳に響いた。
は・・・?取れた?何が?
恐る恐る目を開くとそこには俺が思い描いたような光景はなく、二人は椅子に座って向か
い合いあいつは涙目でセンに手を差し出し、センはその手を取って余った方の手に針をひ
らめかせていた。
「うお〜ビビった。センちゃん針なんか持ち出すんだもんな〜」
「結構深かったからね。バン針使ったことないの?小さい頃おばあちゃんとかにやっても
らわなかった?」
「普通毛抜きとかじゃん?針は初めてだったな〜。けど取れてよかった!サンキュなセンち
ゃんv」
「どういたしましてv」
何だ?何が一体どうなっているんだ???
「ところでどったの?相棒」
展開についていけずに入り口で飛び込んだままの姿勢で凝固する俺にあいつが視線を向け
た。
それを合図にしたように、俺に背を向けていたセンもぐるりとこちらを向いてニッコリ笑
って言った。
「というわけでホージー。バンの指に刺さった棘を抜いてあげてただけなんだけど。『ふし
だらな行為』って何かな?」
「・・・・・・・・・・・・いや」
一瞬センの背中に黒い羽、尻に黒くて細いシッポ見えたのは断じて気のせいじゃない!
俺はそのまま回れ右してデカルームを後にした。
後ろでまたあいつが人を『相棒』呼ばわりして何か言っていたようだが、俺の心中はそれ
どころじゃなかった。
畜生センの奴絶対にわざとだ。嵌めやがって!!
俺をおちょくって何が面白いんだくそっ!!
確信犯なセンにも腹が立つが本当に腹立たしいのは・・・あんなとんでもない勘違いをし
た俺自身だ!!
刺抜きだと分かってしまえばとりたてて不自然な会話じゃなかった。
それを俺は・・・俺は・・・っ!どうしてあんな・・・っ!
違う・・・俺は違う。俺は断じて違うんだーっ!!
ええいくそっ。俺は負けんぞ。負けてたまるか!
俺は戸増宝児・・・腐っても戸増宝児だっ!!





ホージーって無駄に潔癖症なカンジがするんですよ。
そういう人はからかいがいがあるというかね・・・
こう弄り倒したくなるんですよ。(笑)
(センちゃんの心理)


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