Colors



「お〜い相棒〜!・・・あり?いねぇの?」
勢いよくデカルームに飛び込んだ伴番はそこに目的の人物を見つけられずに肩を落とした。
「ホージーならしばらく見てないよ?」
伴番のその様子に先刻からその場にいた仙一はくすくすと笑った。
「そっか・・・。あ〜も〜どこ行ったのかな〜」
「何か用事?」
「いや別に用はねぇけどさ。事件の無いうちにもっとこう親睦を深めようと思ってさ!何
せ相棒だし!」
拳を握って力説する伴番に仙一はもともと細い目をさらに細めて椅子から立ち上がった。
「ねえバン」
「ん?」
「どうしてホージーが『相棒』なの?」
「へ?」
「俺じゃダメ?」
「は?」
ゆっくりと伴番に近づいてその前に立ち、仙一は伴番の目を真っ直ぐに見つめてニッコリ
笑って言った。
「え〜と・・・何だよセンちゃ〜ん。俺の相棒になりたいっての?いや〜まいったな〜」
「うん。なりたいよ」
仙一の言葉の真意がつかめずにふざけて誤魔化そうとした伴番に仙一は相変わらず笑顔で
即答した。
思わず伴番は言葉に詰まり、口元を引き攣らせて仙一を見上げた。
「・・・俺じゃダメ?」
そんな伴番に仙一はもう一度静かに尋ねた。
しばし二人は無言で見つめ合った。
仙一が何故そんなことを言うのかそれでも伴番にはよく分からなかったが、顔は笑ってい
ても仙一がふざけていないことだけは伴番にも分かって、伴番は仙一の目を真っ直ぐ見据
えて言った。
「・・・悪ぃダメだ。やっぱセンちゃんじゃダメだ」
「そっか・・・残念」
はっきりと真剣な言葉で返された仙一は肩をすくめ、小さく溜息をついてそう言った。
「ごめん」
申し訳なさそうに伴番がうなだれると、仙一は困ったように笑った。
「そんな顔しないで。別に困らせたいわけじゃないんだ。でも・・・ひとつだけ聞いてい
い?」
「何?」
「どうして俺はダメなの?」
「え・・・」
「率直に言ってくれていいよ。その方がスッキリするし・・・やっぱりホージーの方がデ
カとして優秀だから?」
言いながら、仙一はチラリと今は閉じられているデカルームの入り口をうかがった。
その向こうにいる第三者の存在に仙一は先程から気付いていた。
そしてそれが誰であるかも察しがついていて、その上で仙一は伴番から答えを聞き出そう
としていた。
「ねえバン?」
「う〜・・・怒んなよ?」
「怒らないよ」
「・・・緑の人だから」
「は?」
一瞬仙一は我が耳を疑った。
予想もしていなかった答えに仙一の思考は珍しくもフリーズした。
「あ、あのバン、それってどういう・・・」
思わずどもりながら聞き返す仙一に伴番は胸を張って言った。
「だからぁ!俺赤い人!んでセンちゃんは緑の人!制服でもスーツでも二人並んだらクリ
スマスカラーになっちまうだろ?そんなのカッコつかねぇじゃん。だからダメ!」
今自分は生まれてこの方したこともないようなバカ面を晒しているに違いない。
それを思うにつけ、仙一は今ここに他の誰かがいなくて良かったと心から思った。
「そ、そんな理由・・・?」
「そう!やーっぱさぁ赤の隣には青!基本でしょ!対称色で並んだ方が断然カッコいいも
んな!だから青い人が俺の相棒!!」
目を輝かせてビシッと人差し指を突き出して断言する伴番を見て、仙一は我慢しきれずに
吹き出しそのまま声を上げて笑った。
「あ!何だよ何が可笑しいんだよ!笑うなよな〜っ!!」
「ご、ごめん・・・っくくくっ!で、でも、うん。バンらしいよ・・・ぷっ、あはははは!」
「ちぇ〜っ何だよそれ〜」
いつまでも笑い続ける仙一に伴番はいたく不本意な気分で頬を膨らませた。

その頃、デカベースの中を顔に凄い形相を浮かべて大股で歩く男がいた。
男はあるところでふと立ち止まると傍らの壁に思い切り拳を叩きつけた。
(あの野朗・・・ふざけやがって!!)
心の中でそう毒づいてもう一度拳を叩きつけようとしたその時、突如横から差し出された
手の平によってその拳は受け止められた。
「壁に穴が開くよ、ホージー」
「セン・・・!?」
はっと見上げるとそこには仙一が笑顔で立っていて、宝児は決まり悪く拳をおさめた。
「いつから立ち聞きなんてするようになったのかな?」
仙一の言葉に宝児は舌打ちした。
先程デカルームへ入ろうとすると中で仙一と伴番が話しているのが聞こえて、その会話の
内容に思わず足を止めてしまったのは事実だった。
宝児自身気にはなっていたのだ。
印象は最悪だったろうになぜ伴番はことあるごとに自分を『相棒』呼ばわりするのか。
それがまさかあんな理由だとは夢にも思わなかった宝児のプライドは少なからず傷ついて
いた。
デカとして優秀だからとかスマートで男前だから(?)とか、そういった『特別』な意味
合いが全くそこになかったことに宝児はいたく気分を害していた。
それがどういう意味を持っているかには全く気付かないまま・・・。
「まぁまぁそんなに怒らなくてもいいじゃない。それとも実は『相棒』って言われてまん
ざらでもなかったとか?」
「な・・・っ!」
「だからそんなに腹が立ってるんじゃないの?」
「バカ言え誰がっ!!要するにあのバカは青い奴なら誰でもいいんだろうが!?あいつの
『相棒』になりたいのなら替わってやるぞ!!」
宝児はそう吐き捨てると仙一に見向きもせずにまた大股で歩き出した。
仙一はそんな宝児の背中を見送り肩をすくめて呟いた。
「残念ながら・・・もう遅いんだってさ」
宝児は仙一が笑い出したのをきっかけにデカルームの前から去った。
実はその後にまだ会話があったことを仙一はわざと言わなかった。
あの後・・・。

「じゃあさバン。俺が青い人になったら相棒にしてくれる?」
「は?」
「制服とスーツ替わってもらうの。そしたら俺が青い人だよ」
「う?う〜ん・・・」
「どう?」
「・・・やっぱダメ」
「どうして?」
「だって俺もう知ってるからさ。相棒は相棒で、センちゃんはセンちゃんだってこと。だ
からその・・・」
言い淀む伴番を仙一はおもむろに柔らかく抱きしめた。
「セ、センちゃん!?」
「ごめん。ちょっと意地悪だったね」
「・・・・・」
「仕方ないなぁ。じゃあ『相棒』はこの際すっぱり諦めてホージーに譲るけど、俺のこと
も忘れないでね」
「え?」
「俺だけじゃないよ?ジャスミンもウメコもみんな仲間だ。遠慮なく背中預けていいんだ
からね」
「・・・っ!おう!俺もいつだってみんなの背中預かるぜ!!俺センちゃん好きだな〜。
相棒と大違い!」
「ありがと。おれもバンのことが好きだよ」
何気ない伴番の言葉と自分が言った言葉に少し胸が痛んだ・・・。
それがやっぱりちょっと悔しいから、このことはホージーにはしばらく内緒。
そんなことを思いながら仙一はポケットに両手を突っ込み、宝児が歩いていった方向に背
を向けて歩き出した。





初デカSS。
緑→赤←青。
デカにおけるうちの基本方針ってことで。(笑)


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