Halloween Joke



「真墨!」
「んぁ?」
「とりっく、おあ、とり・・・?と・・・?あ〜・・・何だ???」
「Trick or treat ?」
「おう。それだ!」
映士の言わんとすることを察して真墨がそう言うと、映士は嬉しげに笑って真墨に手のひ
らを広げて突き出した。
突然こんな突飛な行動に出た映士の情報源を真墨は了解している。菜月だ。
出動もなくデスクワーク主体なサロンで、魔女のような黒い帽子を被り皆にそう言って手
を差し出して回っていた菜月の姿が思い出される。
その時、映士はサロンにはいなかったのだが後で菜月に捕まったのだろう。その時にハロ
ウィンというものについて偏った知識を入れ知恵されたに違いなかった。
アシュの監視者としてそういった行事ごとに触れる機会の少なかった映士にはそれはとて
も新鮮で、自分も誰かにやってみたくなったとそんなところだろうと推察し、その白羽の
矢を立てられたのが自分だったことに真墨は溜息をつきつつ苦笑する。
幼いとも純粋ともいえる映士の行動。それが自分にだけ向けられていることに少なからず
優越感を感じつつ、真墨は律儀に食べかけのポッキーの箱から1本取り出し映士に差し出
した。
「ほらよ」
「おう♪」
映士は至極満足そうにそれを受け取る。
そのままぽりぽりとポッキーをかじる上機嫌に弛んだ口元が体躯に似合わずひどく子供じ
みていて、真墨の中の悪戯心を駆り立てた。
「おい、映士」
「ん?」
「Trick or treat」
「はぁ!?」
名前を呼ばれて振り向くと、そこにはニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら手のひらを
差し出す真墨がいて、映士は思いがけない展開に目を丸くした。
「聞こえなかったのか?Trick or treatだ。何か甘いモノ寄越せよ。さもなきゃ悪戯だ」
重ねてそう宣告する真墨に、そう返されるとは思っていなかった映士はあからさまに狼狽
した。
「な・・・俺様がそんなもの持ってるわけねぇだろう」
「そんなことは聞いてないぜ?」
確信犯の余裕で意地悪げに笑う真墨の側に先ほどのポッキーの箱が目に入って、映士は勢
いそれを掴んだが中身は空だった。手の中で空しく潰れた空箱に映士はチッと舌打ちする。
「残念。どうやら悪戯決定だな」
「え!?わ・・・ちょ、ちょっと待・・・」
そう言ってがしっと両肩を掴んできた真墨に映士が慌てて制止の言葉を言い募ろうとした
その時、不意に映士の目の前に真墨の顔が近づいてきて唇に柔らかい感触が触れた。
「え?」
何が起きたのか映士は分からなかった。今起こった出来事を反芻するように映士は無意識
に己の唇、正確には唇の端の辺りを指で触れた。
今、何かがそこに触れた。あれは何だ?温かくて柔らかい、あれは・・・。
混乱して考えていることが上手く纏まらなくて呆然としていた映士だったが、真墨の吹き
出すような笑い声にはっと我に返った。
「ははっ!!お前なんて顔してんだよ!冗談だろ冗談!悪戯だって言ったろ?」
目の前で腹を抱えて笑う真墨の姿に、真墨の言葉に、映士は言いようのない感情の昂ぶり
を感じた。奥歯を噛み締め、拳を握りしめてもそれは抑え切れなかった。
「ふ・・・ふざけるなっ!!」
叫ぶと同時に映士は衝動的に拳を振り上げていた。
それは無防備だった真墨の顔面に見事にヒットした。
「いってぇ!!てめぇ映士・・・!」
ちょっとした悪ふざけのつもりで、まさか映士がそこまで怒るとは思っていなかった真墨
は殴られたことに反射的に映士を睨みつけた。
しかし、見上げた映士の表情に真墨は言葉を無くした。
握りしめたままの拳を震わせて仁王立ちする映士の顔は真っ赤で、何かを堪えるように唇
を噛んだその表情は今にも泣き出しそうに歪んでいた。
「映士・・・」
呆然とその名を呼ぶと、映士は弾かれたように真墨に背を向けそのまま部屋を飛び出して
行ってしまった。
「お、おい映士待っ・・・!」
慌てて後を追おうと身を起こしかけた拍子に頬に走った痛みに真墨はまた座り込んだ。
手で押さえると、映士に殴られた頬が熱を持っていた。
先ほどの映士の表情を思い出すとそこが疼いた。
怒っていた。しかしそれ以上に・・・傷ついた。あれはそんなカオだった。
「何だよ・・・ただの冗談だろ・・・」
痛みに顔をしかめて呟くと、どこかが切れたのか口中に血の味が広がった。





ハロウィンをネタに書くのは人生で二度目です。
友達の〜エリア〜から〜♪(BY CCB)
はみ出しつつある感じで。(笑)
どちらかというと銀→黒気味?
このまま終わると後味悪いので
ちゃんとくっつくまで
ボチボチ続けていこうかな〜とか。
実は思ってます。


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