| 決戦は金曜日 |
通常の勤務時間もとうに終了し、人気のなくなったサージェスミュージアム。 その一角に秘密裏に存在するボウケンジャーの基地、通称「サロン」。 そのサロンの自動扉がプシュッという音を立てて左右に開いた。 「よう」 「映士!?」 菜月と蒼太は既に帰宅し中にいたのは真墨一人で、意外な人物の突然の来訪に真墨は驚き の声を上げた。 「おう。何だぁ?こんな時間まで一人で残業とはご苦労なこったな」 「ほっとけ。お前こそこんな時間にどうしたよ。最近こっちにゃ滅多に顔出さねぇくせに」 「定期メンテナンスだ。ゴーゴーチェンジャーとか色々な。忙しくてずっとほったらかしてたら 呼び出しくらっちまった」 「バカ、大事なことだろ。ちゃんと受けとけよそういうのは」 「説教くせえな。それもチーフらしさってやつか?え?真墨チーフ?」 「うるせぇよ、チーフ言うな!」 言いながら真墨が突き出した拳を映士は軽くよけて手のひらで受け止め、二人はひとしき り笑いあった。 ボウケンレッドであった明石暁が宇宙へと旅立った後、ボウケンジャーのチーフとして後 を託された真墨だったが、チーフの肩書きと職務はあくまでも明石が帰還するまでの代理 であり、自分の柄じゃないと『チーフ』と呼ばれることを真墨は今でも毛嫌いしていた。 しかしながら菜月や蒼太などはそれを承知の上で、親愛の気持ちを込めつつもわざとそう 呼んで真墨をからかっていたりするものだから、「チーフって言うな!」は最近すっかり真 墨の口癖だった。 映士はといえば、その後ボウケンジャーから独立し本格的に別働部隊として活動し始めた サージェスレスキューの任務に従事し多忙な日々を送っていた。 プレシャス回収といった任務の際にボウケンシルバーとして協力することはあっても普段 のときに映士がサロンを訪れることはほとんどなくなり、二人はここしばらく顔すら合わ せていなかった。 拳を収めた真墨が椅子に座りなおすと、映士はノートパソコンだけが乗った無駄に広いデ スクの上に腰を下ろし、ふっと息をついた。 「久しぶりだな・・・元気か?」 「まぁぼちぼちだな」 「少し痩せたんじゃねぇか?ちゃんと食ってるのかよ」 「食ってるよ。自己管理ぐらいちゃんとやってる」 「どうだかな。お前は俺様がいねぇとすぐに無精しやがるんだ。最近家にもろくに帰って ねぇじゃねぇか」 意外にも几帳面な一面を持つ映士の自分を案じる言葉に、やりかけの仕事を続けながら答 えていた真墨はふとキーボードを打つ手を止めた。 そして映士を上目遣いに見やって言った。 「・・・なんで知ってる?」 「え?」 「俺がここしばらく家に帰ってないって、なんでお前が知ってんだ?」 そう言って真墨はニヤリと笑った。 忙しくて家に帰っていないことは事実だった。 しかしながらそれは、顔を合わせてもいなければ連絡もとっていない映士が知っているは ずのないことで。 けれど映士は知っていた。それはつまり・・・。 真墨の声音と顔つきに己の失言を悟って映士は真墨から目をそらして口籠った。 「そ、それはその・・・あれだ、勘だ勘」 「ほ〜う、勘ねぇ」 「何だよ!」 苦し紛れに適当に言い繕う映士に真墨はますます顔をニヤつかせる。 映士はそんな真墨に眉を吊り上げて噛み付き、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。 ほのかに朱を刷いたその目元に真墨は笑いが止まらなかった。 一体何度、自分が知らないところで映士は家に足を運んだのだろう。 自分に会いに来てくれていたのだろう。 会いたいと、映士がそう思ってくれていたことが真墨には嬉しかった。 そして、既にその事実が露呈したにもかかわらず、それを素直に認めようとはしない映士 の意地っ張りな態度とみえみえの照れ隠しがあまりにも映士らしくて、愛しい気持ちに拍 車をかけた。 自分よりも大きなその体躯を今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られながら、真墨は言っ た。 「お前、今日はもう上がりか?」 「あ?ああ、向こうにはこのまま直帰するって言ってきたからな」 「そうか。俺も今日はこの書類まとめたら終いだ。久しぶりに家に帰れそうだぜ」 「そりゃ良かったな」 「ああ、だから・・・」 そこで言葉を切って真墨はデスクに手を突いて立ち上がり映士へと手を伸ばした。 その気配に振り返った映士の頬を真墨の手が包み、引き寄せられるまま顔がぐっと近づい たのに映士は目を見開いて硬直した。 「待ってろよ」 「ちょ・・・おい・・・っ」 唇が触れ合う寸前に真墨はそう囁き、動揺する映士の抗議は言葉にならなかった。 柔らかく重ねられる唇。 ぬくもりを分け合うようなそれはほんの一瞬で、ちゅと音を立てて離れた。 そんな不意打ちのキスに惚ける映士の耳元に唇を寄せ、真墨はさらにぼそりと付け加えた。 「俺の部屋で、な?」 色を滲ませたその声と言葉に映士ははっと我に返って真墨を突き飛ばし、デスクの上から 飛び退いた。 「何で俺様がそんなことお前に指図されなきゃならねぇんだ!俺様は俺様の好きにする!」 仁王立ちになって腕を組んでふんぞり返り、真墨を見下ろしながら映士はことさら大きな 声でそう言い放った。 しかしその顔は見事なまでに真っ赤で、突き飛ばされた勢いで再び座り込んだ椅子から見 上げた映士のその様子に真墨はまた笑いが込み上げた。 「はいはい。そうかよ」 「何ニヤニヤしてやがる!」 「別に」 真墨が軽くいなせばさらに語気を荒げ、映士は赤い顔のまま肩を怒らせてサロンを後にし た。 その後の映士の行動は想像に難くない。 『好きにしている』だろう映士を思い、真墨が気合を入れ直してノートパソコンに向かっ た瞬間、背後のモニターに映像が映り明るい声が響いた。 『やあやあブラックくん。ごきげんよう〜』 出鼻をくじかれた真墨は小さく舌打ちしてモニターを振り向いた。 そこにはニコニコと笑う逆三角錐のCGキャラクターの姿が映し出されていた。 そんなふざけた体裁をとってはいても、その声の主はやせてもかれてもボウケンジャーの 司令官であるのだが、間の悪い通信に真墨の態度はぶっきらぼうなものになった。 「何が「ごきげんよう」だ。・・・なんか用かよ、Mr.ボイス」 『そんなに突っかからないでよ〜。シルバーくんとはあ〜んな甘い声で話してたくせにさ 〜。ボイスにも少しは優しくしてほしいなぁ』 ボイスの言葉に真墨はぎょっとなって喚く。 「な!み、見てんじゃねぇよ!!」 『だったらそんなトコでイチャつかないでほしいねぇ。そこカメラあるの知ってるだろ う?』 「ふん」 確かに真墨はそれを知っていた。 けれども触れたい気持ちをどうしても抑えられなくて・・・自業自得と言われればそれま でで、真墨は居直ったように鼻を鳴らした。 『いやはやそれにしてもブラックくんとシルバーくんがそういう仲だったとはね』 「悪いか」 『べっつに〜。ちょっと意外でびっくりしただけ。でもね〜・・・聞いていい?』 「あ?」 『ぶっちゃけどっちがどうなわけ?』 ど直球なボイスの質問に真墨は盛大にこけた。 そして赤面しながらモニターに指を突きつけて怒鳴った。 「嫁入り前の小娘がんな下世話なこと聞くんじゃねぇ!」 『あれれ?もしかして気づいてるのかい?僕の正体』 今度は逆三角錐が目を丸くした。 Mr.ボイスの正体は実は明石とさくらしか知らされていないのである。 それは真墨がチーフとなってからも変わらなかったのだが、先のガジャの侵攻によりゴー ドムの脳髄が狙われた際に姿を見せた少女こそボイスその人であることを真墨は直感的に 見抜いていた。 「分からいでか。俺をなめるなよ」 『あ、そう。まぁいいけどね』 あっけらかんとしたボイスの物言いに真墨は脱力し、大きく溜息をついた。 「で、いったい何の用なんだよ?」 『ああ、うん。本当はその書類の催促のつもりだったんだけどね。でももういいから今日 は帰りなよ』 「は?いいのか?」 『まぁ、どうとでもなるよん。それよりあんまり待たせちゃシルバーくんが可哀想だよ〜』 「・・・っ///」 そう言ってからかうようにピョコピョコと画面をはねる逆三角錐に、真墨はぼっと火がつ いたように真っ赤になり言葉をなくした。 『久しぶりなんだろう?今夜はあっつ〜く燃え上がっちゃうのかな?』 「アホか!!いい加減にしろ!!」 『はっはっは♪それじゃあお疲れ〜』 言いたいことを言うだけ言って通信は一方的に切られた。 「ったく・・・」 静まり返るサロンで、真墨は未だ熱の冷めやらぬ顔を片手で覆って小さく毒づいた。 ボイスの言葉に煽られ、不本意ながら先ほど触れた映士の体温を体が勝手に思い出す。 真墨は大きく頭を振ってそれを打ち消したが、躊躇うことなくパソコンの電源を落としサ ロンを出るそのスピードに、逸る気持ちは正直に現れていた。 |
燃え上がっちゃうんですかね?(殴)
そんな感じ(どんなや)の
チーフ真墨とレスキュー映士です〜v
超全集持ってないので
ボイスの正体については半ば捏造です
買おうかな・・・