| Punch-drunk |
ゴードム文明の大神官ガジャの野望を阻止してから数日。 心身に負った傷と疲労がようやく癒えた頃、ネガティブシンジケートの脅威がなくなった わけでは決してないものの、一つの節目ともいえるものになった先の大きな戦いの労をね ぎらい、Mr.ボイスの計らいでささやかながら祝宴の席が設けられた。 「え〜皆さん!ほんっとーにお疲れ様でした!被害も大きかったですが、ネガティブの一 角を落としたことは勿論のこと、皆さんが無事で、こうしてその喜びを分かち合うことが できたことが何より喜ばしいことだと思います。そして・・・真墨くん、お帰りなさい。 よく帰ってきてくれましたね」 乾杯の音頭をと求められ、恐縮そうにしながらもグラスを手に口を開いた牧野から突然水 を向けられ、真墨は焦ってグラスを取り落としそうになった。 そんな真墨に皆がくすくすと笑い、次いで口々に「お帰り」と声をかけられ、真墨はいた たまれなさに真っ赤になって俯き、黙ってグラスを掲げることでそれに答えた。 「乾杯!!」 それに合わせるように牧野が高らかに言い、それぞれに掲げたグラスを合わせる音が響き 渡った。 そんな風にして始まった宴も半ばを過ぎ、和やかに盛り上がる場から真墨はそっと抜け出 した。 向かった先はトイレだったが用を足しに来たわけでもなく、真墨は手洗い場に両手をつく なり詰めていた息を大きく吐き出した。 顔を上げるとそこには鏡があって、そこに映った自身の姿に真墨は思わず苦笑した。 あの時、ヤイバの言葉に惑い一度は己の中の闇に呑まれかけた。 ギリギリのところでその深淵に落ちるのを踏みとどまったものの、心の底から恐怖した。 自分でも知らなかった、己の中に巣食うものの大きさと深さ。 それが決して己の内から消し去ることは出来ないものだと悟った瞬間には自分が底知れな い怪物になってしまったような気さえした。 そして膨れ上がったそれを抑えきれずに仲間を傷つけた自分自身の弱さに絶望した。 何もかもを見失って彷徨った。 迷って迷って・・・その果てに真墨はここに帰ってきた。 自分の中の闇を捨て去ることは出来ない。 また傷つけてしまうかもしれない。 それでも自分自身の手で守りたいと思うものが真墨にはあったのだ。 それがこの場所だった。ボウケンジャーというかけがえのない仲間がいるこの場所だった。 菜月の言葉がそれを思い出させてくれた。 自分が何者であろうとも、大切なものを守りたいと願うその思いは一片の曇りもない真墨 の真実。 その思いこそが闇を光に変える。 それに気づいた時、もう真墨が己の中の闇に恐怖することはなかった。 『お帰り』 勝手に去って勝手に戻ってきた。そんな自分にそう言って変わらずに受け入れてくれた仲 間の存在に真墨は心から感謝した。 宴に興じる皆の姿を見るうちに、言いようのない安堵感とそんな熱い思いが胸に込み上げ て真墨は一人宴席を離れ、改めて自身を見つめ直していたのだった。 ひとしきり胸の内を巡る思いを噛み締め、落ち着いた頃に真墨はもうひとつ深呼吸した。 そして宴席に戻ろうと足を踏み出したところで、真墨はギクリと身を強張らせた。 「え、映士・・・」 いつの間にそこにいたのか、真墨は全く気づかなかった。 気配もなく、トイレの出入り口をふさぐように立ち尽くす映士に真墨は少なからず動揺す る。 「な、何だよお前。そんなトコに突っ立ってんじゃねーよ、吃驚するだろ・・・」 「・・・・・・」 俯き加減に立つ映士は真墨のそんな言葉にも何の反応もなく無言だった。 映士のその様子に真墨もまた黙り込んで立ち尽くした。 『そんな言葉ではなく、言わなければならないことがお前にはあるだろう』と、言外に言 われているようで逆に真墨は言葉に詰まった。 戻ってきてから、真墨はまだ映士と二人で話をしていなかった。 真墨と映士の間には仲間という枠を超えた特別な関係があった。 にもかかわらず、真墨は己の葛藤に捕われるあまりにその映士にすら何も語ることなく失 踪した。 そのことを映士が何とも思っていないわけがないだろうことは真墨にも分かっていた。 けれど映士は一度もそのことについて真墨に詰め寄ろうとはしなかった。 様々な事後処理に忙殺されて時間がなかったことは確かだが、映士があまりにも以前と変 わらず何も言わないのをいいことに後ろめたさも手伝って、真墨もまた積極的に映士と二 人になろうとはしてこなかった。 しかしそれでいいわけがないことは真墨にも分かっていて、一度ちゃんと話をしなければ ならないとは思っていたのである。 その矢先、突然こんなところで何の心構えもなく映士と二人きりになってしまって、何を どう話したらいいものか分からず、さりとてこの状況で何もなかったようにここから去る ことも出来ず、真墨は視線を彷徨わせた。 「映士・・・その、あのな・・・っ!?」 それでも何か言わなければと真墨が声を絞り出した瞬間、映士は突然もの凄い力で真墨の 腕をつかみ真墨を引きずってトイレの奥に大股で歩き出した。 唐突な映士の行動に対処できず真墨は引きずられるまま一番奥の個室に力任せに押し込ま れた。 「うわぁっ!?」 放り投げる勢いで投げ出され、洋式便器の蓋の上に倒れ込む真墨にも構わず、映士は無言 のまま自分も個室に入るとそのまま鍵をかけてしまった。 「痛ぅ・・・おい、映士!何を・・・っ!?」 したたか打ち付けてしまった頭を振り、身を起こそうと映士を振り向いた真墨は最後まで 言葉を発することが出来なかった。 床に膝をつき、便器の上に座り込むような格好の真墨の体に両腕を回してしがみつくよう に、映士が抱きついてきたからだった。 「え、映士・・・?」 それは迷子になった子供がようやく見つけた母親にすがるような抱擁だった。 「映士・・・」 宥めるようにその名を呼んで広い背中をさすると腕の力が弛み、そっと体を離して目にし た映士の姿に真墨は息を呑んだ。 髪は白く、頬には特有の痣、そして口端からのぞく犬歯。 それはいつか見た、恐らくはアルコールを摂取することで発現する外見上のアシュ化。 宴の席でうっかり酒を飲んだのだろうことが推察されたが、真墨が驚愕したのはそんな変 化ではなかった。 「ます、み・・・」 しゃくり上げるように小さく名を呼ぶ声。 映士は泣いていた。 普段はキツイくらいに切れ上がった眦は下がり、その双眸からは後から後から透明な雫が 溢れては流れていた。 「映士・・・」 真墨はそっと手を伸ばし頬を流れる涙を拭う。その手に自分の手を重ねてぬくもりを確か めるようにしながら、映士は言葉を紡いだ。 「もう・・・戻ってこねぇと思ってた・・・」 その間にも映士は何度も真墨の手に頬を摺り寄せる。 「もう二度と・・・会えねぇと思った・・・」 「映士・・・」 痛々しくさえあるその姿に真墨は掛ける言葉を見つけられず、ただ手のひらを映士に預け たままその名を繰り返し呼んだ。 「探したんだぞ!めちゃくちゃ探しまくった・・・!けど・・・やめた。たとえ見つける ことができてもお前はきっと帰ってこねぇと思ったから・・・」 「なんで・・・」 「もしも俺様がお前だったらきっと同じことをする。同じことを思う。だから・・・探し ても無駄だと思った・・・」 そこまで言って、映士は涙を流しながらも思いがけずやわらかく微笑んだ。 「見くびってたな・・・俺様はお前を」 映士のその言葉に、向けられた眼差しに真墨は心臓を鷲掴みにされたような心地がした。 そうだ。同じなのだ。と真墨は思った。 映士のアシュの血と真墨の闇。 それは形は違えどお互いにとって限りなく同質に近い意味をもつもので。 同じモノを背負って迷う自分の姿に映士がどれほどの痛みと悲しみを感じたのか。 今頃になってようやく気づいた映士の痛みが胸に突き刺さって堪らなくなって、真墨は衝 動的に映士を強く抱きしめた。 「そんなことねぇ!そんなこと・・・ねぇよ。・・・ごめん。ごめんな映士!」 「真墨・・・!」 真墨に抱きしめられたことで最後の箍が外れたのか、抑えていた感情が噴出すように映士 は喚いた。 「畜生!バカヤロー!何も言わずにいなくなりやがって・・・!俺様にこんな思いさせや がって・・・!真墨・・・真墨!」 「映士・・・!」 真墨の名を呼びながらその肩や背中をめちゃくちゃに拳で叩く映士の顎に手を掛け、真墨 はその唇を塞いだ。 「ん・・・!」 その途端大人しくなった映士に、真墨はさらに深く唇を重ねその口腔を貪った。 映士もその腕を真墨の背へと回し、待ち焦がれていたかのように真墨の舌を受け入れ、二 人は何度も何度も角度を変えて舌を絡めあった。 濃厚な口付けに熱を孕む吐息さえ貪り合い、想いのたけを込めたキスを交わす。 日頃は唯我独尊な言動を取ることの多い映士だったが、その実誰よりも周囲を気遣う思慮 深さと優しさを持っていることは周知の事実である。 腹に溜め込むのは嫌いなくせに真墨の葛藤を慮り、真墨がいない間の自分自身の葛藤は口 には出さずにずっと飲み込んでいた映士。 しかしそれは飲み込んでも決して消化はされなかった。 映士自身知らずに胸の底に溜まり溜まっていた思い。真墨の失踪に対する怒りと悲しみ、 不安と絶望。 酔って理性の箍が外れたおかげでそれらは今慟哭となって吐き出された。 自分が思うよりもずっと傷ついていた映士の心を知り、真墨は未熟な自分自身に腹立たし さを感じ、同時にそんな映士に限りない愛しさを感じていた。 時間も場所も忘れてそんなキスに酔いしれていると、不意に映士の手が不埒な動きを見せ て真墨はぎょっとして唇を解いた。 「え、映士!?ちょ・・・」 映士の片手は真墨の下腹部に伸びていて、ジーンズ越しにそこに触れながら映士は瞳を潤 ませて熱っぽく呟いた。 「・・・シテぇ」 「シテぇってお前、イキナリそんな・・・こんなトコで!?」 動揺する真墨にお構いなく映士の指先は物欲しげに真墨の下腹部をなぞる。 そこでようやく真墨は思い出した。 この状態の映士が素直なのはメンタルな部分だけではなく、セクシャルな面でも非常に欲 望に忠実だということを。 溜め込んでいた思いを曝け出して真墨にぶつけ、キスを交わして、ようやく心の安寧を取 り戻したことでスイッチが入ったのかもしれなかった。 「真墨」 名を呼ぶ声が甘さを帯びて真墨を誘う。 真っ白な髪はどこか儚げで、泣き腫らした目元と濡れて揺れる透き通った瞳が情を刺激し て真墨はこくりと咽喉を鳴らした。 「お前が・・・欲しい。体中で感じてぇ。なぁ・・・」 「え、いじ・・・」 「感じさせてくれ」 「・・・っ!」 戸惑う真墨の鼻先に顔を寄せ、そう囁いた映士に真墨の理性はぷっつりと切れた。 映士の体をきつく抱きしめてもう一度深く唇を重ねる。 そして唇をつないだまま映士を促して立ち上がり、そのまま壁に映士の体を押し付けるよ うにして体を密着させた。 「真墨・・・?」 困惑げに自分を見下ろす映士に真墨はニヤリと笑った。 「そんな顔するなよ。ちゃんとヨクしてやるから・・・」 そう言って真墨が映士の耳を食み、首筋へと歯を立てるのに映士は吐息を漏らして目を閉 じた。 「は・・・ん」 映士の首筋から鎖骨の辺りに唇を這わせながら真墨はシャツの上から映士の胸を弄る。 既にシャツの布地越しにもその存在が分かるぐらいに立ち上がっている乳首に真墨の手が 触れると、それだけで映士は身を戦慄かせて喘ぐ。 「映士」 耳に息を吹きかけるように名を囁く真墨の声も今や興奮に掠れていた。 愛しさと情欲とで昂ぶるまま、真墨は映士のベルトに手を掛け性急にジーンズの前を乱し 下着の中に手を差し入れた。 「あぁっ」 変化しつつあった中心を直接握りこまれる強い刺激に映士が声を上げる。 手の中で一層体積を増して先を濡らすそこを下着から引きずり出して、真墨は強弱をつけ て揉みしだき擦り上げた。 「あっ!はぁ・・・やあっ、あっ」 焦らすことなく与えられる快感に映士は真墨の細い肩に腕を回して縋り、感じるままに艶 めいた声を上げ、真墨の手に擦り付けるように腰を揺らめかせた。 「映士・・・声、やべぇから噛んでろ」 真墨がそう言って肩口に埋められた映士の口元にぐいと肩を押し付けると、映士は素直に 真墨のパーカーの布地を噛み締めた。 その様子に真墨はクスリと笑い、同時に今の映士には牙のように伸びた犬歯があることを 思い出し「こりゃ穴が開くな」と心の中で思ってまた苦笑した。 そして映士の雄芯を握ったまま片手で器用に己の前を寛げ、真墨は映士の媚態に熱く張り 詰めたモノを外気にさらしそこに手を添えた。 「も、我慢できねぇ・・・俺も」 息を吐きながらそう呟くと、真墨はひくひくと震える映士の雄芯に己の猛りを擦り付けた。 「んぅぅっ!!」 味わったことのない刺激に映士の腰が跳ね、戒められた口元からくぐもった悲鳴が漏れる。 思わず引けた腰は壁に当たり、さらにそこに真墨が腰を押し付けてきて映士の体は完全に 真墨の体と壁に挟まれて拘束されてしまった。 「ん・・・く・・・」 「すげ・・・お前の、熱い」 恍惚とした声で小さくそう囁き、手を添えなくても十分に屹立した互いの雄芯から手を離 して両手で映士の腰を掴み、真墨は雄同士を擦り合わせるように腰を蠢かせ始めた。 「んんっ!!んぅ・・・ふ、く・・・っ」 お互いの腰に挟み込まれて揉みくちゃにされる二人の雄芯は、どちらのものとも分からな い体液でどろどろに濡れそぼり擦れ合うたびにクチャクチャと淫猥な水音を立てた。 真墨のパーカーを食い締めたまま、映士は強過ぎる快感にかそれとも壁に押し付けられ真 墨に掴まれているせいで思うように腰を動かせないもどかしさからか、ひっきりなしに髪 を左右に振り乱しながら呻く。 真墨は映士の唾液に濡れる布の感触と映士の熱い吐息を肩口に感じながら、はっはっと短 く息を吐いて喘ぐ。 直接的な快感と体の中心から響く濡れた音とお互いの感じている様が二人を昂ぶらせてい く。 「映士・・・映士・・・心配させて、ごめんな」 「う・・・ふぅ・・・っ」 「好きだぜ・・・」 「くぅっ!!」 映士の耳元にそう囁き、真墨は二人分の雄芯を一まとめにして片手で握りこみ激しく擦り 上げた。 「ん!ん!んぐ・・・っ、うぅー・・・っ!!」 一気に高みへと追い上げられ映士が上り詰める瞬間、真墨は手近にあったトイレットペー パーをホルダーから勢いよく引き出し先端を包んで迸る白濁を受け止め、ほぼ同時に自分 もまたそこに白濁を吐き出した。 はぁはぁと荒く息をつきながら余韻に浸っていると不意に映士の体から力が抜け映士はが くりと崩れ落ちた。 「うぉっ!?」 支えきれずに真墨は映士の体ごとまた便器の上に座り込む羽目になる。 完全に意識を失った映士の髪はいつもの茶髪に戻り、頬の痣も犬歯も既に消えていた。 そして聞こえてくる規則的な寝息。 まるで電池が切れたような映士の状態の変化は以前と全く一緒で真墨は映士の体を抱えて 苦笑した。 ここまで以前と同じならきっと・・・いや間違いなく、目が覚めたら映士は今ここであっ たことを何一つ覚えていないのだろうと真墨は思った。 けれど真墨は知ってしまった。 自分が迷い、何も告げずにいなくなったことでどれだけ映士が傷ついていたのか。そして 自分がどれだけ映士に想われ求められていたのか。 自分の衣服と映士の衣服を整えて、真墨は眠る映士の額にそっと口付け、映士のこの状況 と穴どころではなく結局食い千切られた自分の衣服とを何と言って誤魔化して皆のところ に戻ればいいのか狭いトイレの個室の中で思案に暮れたのだった。 |
シリアスと見せかけておいて・・・
な感じですみません(笑)
それにしてもうちトコの黒銀の映士は
真墨のこと好き過ぎですね!