お昼寝



平和な午後。
ネガティブシンジケートの活動もなく至って平和な時間が流れるサロンで、他のメンバー
がそれぞれの用事で出かけている中、真墨は一人留守番状態だった。
出動もなく、取り立ててやることもなく、真墨は時間を持て余し、お昼過ぎといううらら
かな時刻も手伝って先程からうとうととまどろんでいた。
その時。
突然己の体のすぐそばで何かがもぞもぞと蠢く感触がして、真墨は目を閉じたまま訝しげ
に眉を寄せた。
(んん?何だ一体・・?)
目を開けようと思うのだが、思ったよりも深く眠り込んでいたのかなかなか覚醒できない。
そうしている間に、蠢いていたモノはすっかり真墨の隣におさまってしまった。
しかも真墨の身体に抱きついて。
(なんだなんだ何なんだ!?)
気力をしぼってようやく目を開けた真墨の視界には、茶色い髪と光の反射が眩しい銀色の
ジャケットが飛び込んできた。
「なぁ・・・っ!?」
その光景に真墨は驚愕し過ぎて声を失った。
背を丸め、真墨に胸に顔を埋めるようにして身をすり寄せ、しっかりと身体に腕を回して
目を閉じているのは誰あろう、ボウケンシルバーこと高丘映士その人だった。
ほとんど明石の独断でボウケンジャーになった新参者。
そのくせ口も態度もでかくてとにかく真墨は映士が気に入らなかった。
それゆえに二人がちょっとした小競り合いを起こしたのはつい最近のことだ。
しかしその一件は逆に二人を打ち解けさせる結果となり、当初抱いていた映士に対するわ
だかまりは真墨の中で既に解消されていた。
しかしである。
だからといってこの状況は真墨にとって到底受け入れがたいものだった。
何が悲しくて自分よりも図体のでかい男に抱き枕よろしく抱きつかれなければならないの
か。
しかも意味不明な行為を仕掛けた本人は、真墨の安眠を妨害しておいてなお安らかに眠ろ
うとしている。
あまりに理不尽な状況に真墨は思い切り怒鳴った。
「おいコラ、てめぇ、映士!銀色!!何寝てんだ職務中だぞ!!」
「・・・お前だって寝てたじゃないか黒色」
「う、そ、それはその・・・って、色で呼ぶな色で!!」
「じゃあお前も呼ぶな」
「つーか違うだろ!その前にお前何やってんだって話だよ!離せって!」
「嫌だ」
「はあ!?」
「お前、温かくて気持ちがいいぞ。それにいい匂いがする」
「な・・・」
「牛乳みてぇな・・・匂い・・・だ」
それなりに真墨と会話を交わしていた映士だったが、段々口調が弱々しくなっていき、そ
の言葉を最後にとうとう寝息を立て始めてしまった。
勿論体勢はそのままで。
残された真墨は怒りと屈辱にぶるぶると身を震わせた。
(こ、この野朗・・・。『温かくて気持ちがいい』だと?俺はお前のアンカか何かか?つー
か温かいってそれはあれか。「子供体温」だと言いてーのか!?ああ、確かに俺は平熱高ぇ
よ、それがどーした。文句あるか!おまけに何だ?『牛乳の匂い』だって?そりゃ要する
に「乳臭い」とでも言いてぇわけかよっ!ああ、ああそうだよ。今でも毎日未練がましく
牛乳飲んでるよ、悪ぃかよ。俺よりちっとばかしでかいと思いやがってお前だって明石や
蒼太に比べりゃ小せぇじゃねぇか、くそ。遠回しに俺をガキ扱いすんじゃねぇよ・・・っ!!)
奥歯を噛み締めて心中で激しく憤りながら真墨は拳を握りしめた。
そしてその拳を映士の頭へと振り下ろそうとしたその瞬間、真墨は手を止めた。
怒りを込めて睨み据えた映士の顔はあまりにも無邪気であどけない寝顔で。
規則正しく立てられる寝息はあまりにも安らかで。
時折胸に顔をすり寄せるその仕草はひどく小動物じみていて。
そんな映士を目にして、真墨は一瞬で毒気を抜かれてしまった。
握っていた拳を開き、怒らせた肩を落として脱力する。
「ったく・・・。ガキ臭ぇのはどっちだよ・・・」
苦笑と共にそう呟いて、真墨は眠る映士の鼻先を指で摘んだ。
「んん・・・」
すっかり寝入っている映士は起きる気配こそないものの、うるさそうに顔をしかめて身を
捩る。
真墨はその様子を面白がり、しばらくそれを繰り返していたのだが、いつの間にか自分も
うとうとと眠りに落ちていった。



「何だ?」
明石がサロンに足を踏み入れると、先に中にいた蒼太と菜月がニコニコと笑いながら人差
し指を唇に押し当て、「しーっ」と声を出さないようにジェスチャーを示した。
その向こうでさくらは小さく溜息をつく。
「見て見てチーフv」
菜月に腕を引かれた先にあった光景に明石は目を見開いて絶句した。
「ど、どうしたんだ?コレは」
「さあ?僕らが戻ってきた時には既にこうだったんです♪」
「まったく・・・職務中だというのに何を考えているのか。感心しませんね」
「でも可愛いでしょう〜vvv」
三者三様に返ってきた言葉を受けながら明石はもう一度ソレを見て思わず苦笑した。
そこには爆睡する真墨と映士の姿があった。
お互いに身体を丸めて身をすり寄せあうその様はまるで仲の良い犬か猫の様で、それはそ
れは心地良さそうで幸せそうだった。





黒銀のつもりだけど銀黒のような・・・。
二人は似た者同士で仲良く
じゃれ合ってる感じがいいと思いますv


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