| 冬の散歩道 |
珍しく非番の重なったある日の昼下がり。 晴天に誘われて明石と映士の二人は外出を決めた。 クリスマスムードで賑わう街を特に目的もなく並んで歩く。 ふと映士が足を止めたのはとあるメンズブランドのショウウィンドウの前で。 マネキンに着せられた服を興味深げに見つめる映士に「着てみるか?」と声をかけたのは 明石だった。 「どうだ?明石」 フィットルームを出て、着慣れない服装に少し照れ臭そうにしながら映士はおずおずと明 石に尋ねた。 「ああ、そうだな・・・うん」 「何だよ、歯切れ悪ぃな」 曖昧な返事に映士が不満気に眉を寄せるのに明石は苦笑する。 「いや、すまん。俺はこういうのには疎くてな。蒼太や真墨なら気の利いたことが言える んだろうが・・・」 言いながら、向こうは職務中であるにもかかわらず意見を求めようとでも思ったのか、ア クセルラーを開こうとする明石の手から映士は即座にそれを取り上げた。 「バカか何するつもりだお前は。俺様はな、お前に聞いてんだよ!」 そう言ってアクセルラーを投げ返してくる映士に明石は再度苦笑した。 「そうか、悪かったな。そうだな俺は・・・いいと思うぞ。よく似合ってる」 「そうか」 明石の言葉に映士は満足そうに笑った。 結局その服を購入することもなく店を後にし、二人はオープンカフェで休むことにした。 「お前の美味そうだな」 「ん?ああ、飲むか?」 運ばれてきた明石が注文した飲み物を覗き込んで映士がそう言うのに、明石はくすりと笑 ってカップを差し出す。 「おう。俺様のも少しやる」 映士は上機嫌にそう言って替わりに自分のカップを明石へと差し出した。 「ああ、ありがとう」 明石は遠慮なくそれを受け取り、映士がカップに口をつけるのを見やりながら自分も一口 啜った。 今年は暖冬で、12月だというのに上着さえ着ていればこうして日中外にいてもあまり寒さ を感じない。 高く澄み渡る青空の下にいる解放感からか、本人は無意識だろうが少しばかり甘えるよう な態度を見せる映士に、明石はさらに心の中まで温かくなるのを感じた。 至極穏やかな空気と時間が二人の間を流れて過ぎる。 「あの〜すみませ〜ん」 そこへ突然二人組の若い女性が声をかけてきた。 明石も映士も全く見知らぬ女性で、二人は思わず顔を見合わせる。 「お二人ですか〜?私たちも二人なんですけどぉ〜」 「よかったらぁ・・・ご一緒させて頂いていいですか〜?」 いわゆる逆ナンパであった。 「いや、あの、俺たちは・・・っ!?」 それを察して適当に言い繕って断ろうとした明石の腕を突如映士が掴み、その腕ごと明石 の体をぐいっと自分の方に引っ張った。 そのせいで最後まで言えなかった明石にかわって、映士は明石と肩を寄せ合ったままニカ ッと笑って言った。 「悪ぃなネーチャンたち。俺ら今デート中なんだ」 「「え?」」 「え、映士っ!?」 映士の爆弾発言に二人の女性は目を丸くして絶句し、明石は激しく狼狽した。 「行こうぜ明石」 「お、おい映士、待て!」 それを尻目に映士は立ち上がるとさっさと店を出て行ってしまい、明石はまだ固まってい る女性二人をそのままに、慌てて支払いを済ませて映士の後を追った。 それからしばらく二人は黙ったまま広い公園を歩いた。 人気がなくなったのを見計らって明石が先に口を開いた。 「なぁ映士」 「何だ」 「さっきはどうしてあんなこと言ったんだ」 「あんなことってのはどんなことだ」 「その・・・デート中だと・・・」 「・・・違うのか?」 ピタリと立ち止まった映士に倣い明石も歩を止める。 映士は数歩後ろを歩いていた明石を振り返り、わずか眉を吊り上げて語気を強めた。 「デートだと思ってたのは俺様だけか」 「映士?」 「浮かれてたのは俺様だけか?お前は違ったのかよ」 「映士・・・」 俯き唇を引き結ぶ映士に明石はゆっくりと距離を詰めて近づいた。 「そんなことはない。ないが、そのあれだ。世間は俺たちのような間柄にそんなに優しく はなくてだな」 「んなこたぁ分かってる。けどだからってコソコソしなきゃいけない謂れもねぇだろ。そ れともお前は俺様とのことに何か後ろ暗いことでもあるってのか」 「あるわけないだろう。そう・・・そうだな。お前の言う通りだ」 そう言って明石は映士をそっと抱きしめた。 映士の言うことは正論だが、きっと世間には通用しない。 それは分かっていたが、今は映士の自分への思いを大事にしたいと明石はそう思った。 「すまなかったな。デート中に無粋だった」 耳元に唇を寄せて謝罪の言葉を囁き、明石は映士の顎に指をかけそのまま唇を重ね、映士 はその腕の中で抗わず目を閉じた。 「ったく・・・調子ん乗ってイキナリ大胆になるんじゃねぇよお前は」 ひとしきりの口づけの後、唇を離して目元をほんのり赤く染めてそう言う映士に、明石は 例えようのない愛しさを感じていた。 「なぁ映士。お前クリスマスプレゼントもらったことあるか?」 「ああ?あるわけねぇだろんなモン」 「なら俺がお前の・・・お前だけのサンタクロースになってやる。何がいい?さっきの服 がいいか?」 「またお前はこっ恥ずかしいこと真顔で言いやがって!少しは照れろこのバカ明石!」 「お前ほどじゃない。それに、そんな俺がいいんだろう?」 「うるせぇ!!///」 「で、何がいい?」 「いらねぇよ。お前だけいればいい。他には何もいらねぇ」 「欲のない奴だな」 「そうか?相当欲張りだと思うぜ俺様は」 言いながら可笑しそうに笑う映士に明石もつられて笑う。 柔らかな冬の日差しの中、二人は手を繋いで家路についた。 |
ほのぼの赤銀。
チーフってば
ほんと臭い台詞が似合うお人だ。
そして映士が乙女だ。(笑)