Candy



湯を張ってないバスタブに後ろ向きに座り込んだ俺様の頭に温めのシャワーが降りかかる。
「くっそう、明石も蒼太もバカにしやがって」
それからシャンプーが落とされて。
「あれくらいのことであんなに笑うことねーだろ。つーか何が可笑しんだっつーの」
手が髪に入り込んでそこをかきまわすと、あっという間にシャンプーの香料の匂いが浴室
を満たして俺様の頭は泡だらけだ。
「いつもいつも・・・何かといえば人のことガキ扱いだ。そんな幾つもかわらねーってのに!」
背中越しに聞こえる声は最初はぶつぶつと小さく呟く程度だったのに、段々大きく語気が
荒くなっていく。
それに比例して俺様の髪をかきまわしてる指の力加減もきつくなる。
「しまいにゃ菜月やさくらネエサンまで一緒になって・・・っ、あ〜〜〜〜〜っ!!マジ
むかつく!!」
痛ぇよバカ。
こうやって髪を洗われながらこいつのこういう下らねぇ愚痴を聞くのはもう何回目になる
かな。
非番で勝手に部屋に上がり込んでゴロゴロしてた俺様に、帰って来るなり真墨は言った。
「映士、髪洗ってやるからこっち来い」
正直またかと思ったが、大人しく従ってやる。
髪を洗ってもらうのは好きだ。単純に気持ちがいい。
それに。
こいつの愚痴に付き合うのも実はそんなに嫌じゃない。
面と向かって言えねぇで髪洗うのにかこつけてるガキ臭さが可愛い、とか。
こういう甘えを見せるのが俺様だけだって辺りに何つーか優越感みてぇなモンを感じてち
ょっと気分がいい、とか。
いろいろ面白ぇ。
洗い終えた髪にドライヤーを当て始める頃には真墨はあんまり喋らなくなる。
一通り愚痴ってすっきりしてんのか。
それとも愚痴ったことが恥ずかしくなってバツが悪いのか。
・・・にしても熱ぃな。
実はこのドライヤーってやつの風が俺様はあんまり好きじゃねぇ。
でも髪を梳く真墨の手は、さっき髪を洗ってた時の乱暴な手つきとは打って変って優しくて結
構気持ちがいい。
すっかり髪が乾ききると、真墨は無言のままドライヤーのスイッチを切って傍らに投げ、
俺様の体に腕をまわして髪に鼻先を埋めるようにして抱きしめてくる。
そんで飽きるまで撫でたり梳いたりしてひたすら髪を触る。
俺様がされるがままなのをいいことにまるで犬か猫みてぇな扱いだ。
嫌じゃ、ねぇけどな。
でも、今日はほんのちょっと悪戯心が湧いて。ちょっとした意趣返しのつもりで。
いつものように抱きしめようとしてくる腕から逃げて、その顔を覗き込んで触れるだけの
キスをしてやった。
離れると、真墨は大きな目をまん丸にしてて思わず吹き出した。
「・・・何だよ」
「別に。何となくだ」
途端に眉間に皺を寄せて唇をとがらせる様子にますます可笑しくなって笑いながらそう答
えれば、真墨はふんと鼻を鳴らして俺様を引き寄せ今度は深いキスをした。

頑固で意地っ張りでプライドが高くて生意気で、でも寂しがり屋で、可愛いやつ。
いくらでも甘えりゃいい。
明日んなったら、俺様も笑ってやるさ。





元ネタは「君は〇ット」
映士のあの長い茶髪は
なかなか使えるアイテムだと思います。(笑)


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