| 言えずの I LOVE YOU |
<3> 「ずいぶんなマネしてくれたじゃねぇか」 嵐のような情事の後。映士は気を失うように眠ってしまった。 自分の身に縋っていた腕が熱を放つと同時に力を失いぱたりとシーツに落ちた時には流石 に真墨も色をなくして慌てたが、その呼吸が規則正しく穏やかなものであることを確認し てほっと安堵の息をついた。 それから真墨は映士の身体を出来る限り清めて身なりを整え自分も服を身につけた。 今しがたまでの行為を思うと何となく居づらくもあり帰りづらくもあって、真墨はそっと 眠る映士のベッドの脇に跪き頬杖をつく格好で映士の寝顔を見つめた。 どうしたものかと思案しながら手持ち無沙汰に映士の額にかかる前髪を払うと突然その手 をがしりと握られて真墨は心臓が止まりそうになったが、映士は起きたわけではなかった。 眠ったまま握った手のひらに頬をすり寄せる。 その口元が安堵したように弛み、それを見た真墨もつられて口元を綻ばせて苦笑した。 握られた手のひらをそのままにもう片方の手で映士の髪を柔らかく撫でながら、いつしか 真墨もうとうとと眠りの淵へと落ちていった。 そして翌朝、といってもほんの数時間たっただけの夜もまだ明けきらぬ早朝。 真墨が目を覚ますといつのまにか自分がベッドを占領していて映士の姿がなかった。 焦って身を起こすのとほぼ同時に、当の映士が部屋に入ってきた。 シャワーを浴びてきた様子で髪をタオルで乱暴に拭きながら。 下はズボンを穿いているが上は裸のまま、その腹部には既に包帯はなく傷は完全に塞がっ ていて、映士のその血ゆえであろう回復能力の高さが窺い知れた。 そしてベッドの上で身を起こしている真墨を見つけた途端の第一声が・・・である。 冷ややかに目を細め、不遜に腕を組んで胸を張り真墨をねめつける。 ほんの数時間前のしおらしく艶めかしく愛しくさえあった姿など夢幻であるかのような目 の前の男の佇まいに、あまりの落差に、真墨は一瞬言葉を失った。 無言の真墨を尻目に映士はそのままずかずかとベッドへと歩み寄ると躊躇いなくその上へ 乗り上げ真墨の肩をつかんでベッドへ押し倒した。 「おわっ!?」 完全に虚をつかれた真墨は抵抗する間もなく勢いよく背中をシーツへと沈められ、映士は そんな真墨の上に馬乗りになって顔を近づけ見下ろした。 数時間前とは真逆な状況に真墨はひくりと頬を引き攣らせた。 自分を見上げる黒い瞳が戸惑いに揺れるのを楽しげに見つめながら、映士はにやりと口角 を吊り上げて言った。 「お前・・・『冗談なんかじゃねぇ』って言ったな?」 その言葉に真墨はわずかに目を見開き身を強張らせた。 それは行為の前に確かに真墨が口にした言葉だった。 今にして思えば告白も同然なその言葉。 改まって思い出すと羞恥心がこみ上げ真墨の顔に熱が集中する。 その言葉の真意は映士にもちゃんと伝わっているはずで、真墨としても今更それを否定す る気などさらさらないが、だとすれば何故今映士がそれを持ち出すのかその意図が分から ず真墨は眉を寄せて訝しげに呟いた。 「・・・それがどうしたってんだよ」 「じゃあ何だ?」 「な・・・っ」 「冗談じゃないなら何だ。何で俺様にあんなコトした?なあ」 「お、お前・・・」 まるで鬼の首でもとったかのように勝ち誇った顔で映士が笑う。 そんな映士を前に真墨はますます顔に熱を昇らせて、ぱくぱくと口を開閉して言葉になら ない声を発した。 「分かってるくせにこの野郎!」と。 真っ赤な顔で言い淀む真墨に映士はますます調子づき、笑顔で真墨の頬をペチペチと叩い て言った。 「おら、言えよ真墨。ちゃんと聞いてやるからよ」 「ふ、ふ、ふざけんなーっ!!」 その言葉にとうとう真墨は爆発した。 勢いよく飛び起きて逆に映士の肩をわし掴む。 「うおっ!何だぁ!?」 「さっきから大人しく聞いてりゃ言いたい放題・・・大体そう言うてめぇはどうなんだよ!!」 「ああ!?何のことだよ!」 「お前の方が先に俺に惚れてたくせに!」 「な・・・っ!?」 真墨の言葉に今度は映士の顔が真っ赤に染まった。 少なからず図星である。 しかしこんなことになって今更それを認めるのはどうにも癪で、そこは映士も意地だった。 真墨の肩を掴み返して喚き返す。 「はああ!?何だそりゃ!!俺様がいつそんなこと言った!!」 「言ってねぇ!だから言え!!」 「何メチャクチャなこと言ってやがる!キスしてきたのも手ェ出してきたのもお前じゃねぇか! 逆だろ!お前が俺様に惚れてんだろが!!」 「お前があんな顔するからだ!」 「どんな顔だ!!人のせいにすんなこの強姦魔!!」 「なっ!てめ、誰が強姦魔だ人聞きの悪いこと言うんじゃねぇよ!100%合意の上だった ろうが!!」 「俺様は合意した覚えはねぇ!!」 「あんなにてめぇから縋り付いてキスしてきたくせに何言いやがる!!」 「知らねぇ!覚えてねぇ!」 「何をーっ!」 「往生際が悪ぃぞ真墨ぃ!!」 「それはこっちの台詞だ!!」 ベッドの上で取っ組み合いながら二人は怒鳴り合う。 そこには夜を共に過ごし体を重ねた者同士の甘やかな空気など微塵もありはしない。 けれど、そんな甘さとは程遠いけれど、ほんの数時間前にはなかった何かがそこには 確かにあった。 白々と朝日が差し込み始めた部屋に二人の声がハモって響いた。 「「好きだって言えーーーーーーーーーっ!!」」 |
折角シリアスチックだったのにこんなオチ。
所詮ラブコメ体質なもので〜。(笑)
最後の二人の怒鳴り合いがやりたかったんですよ。
でもなかなかテンポ良く台詞が繋がらなくて困った。
素直じゃない二人の恋愛はまだまだこれからです。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました〜v