| Treasure |
ふと首を巡らすと、そこには壁に据え付けられた大きな鏡があった。 そこに映った己の姿を映士はまじまじと覗き込んだ。 ついこの間まで自分の出で立ちは黒一色だった。 アシュの監視者、高丘家の末裔として人類に仇なすアシュを魂滅する者。 しかしそれは人知れず、決して表立っては語られることはない。 そんな存在であった自分には似つかわしい色だった。 なのに今はまるで正反対である。 銀色のジャケットが光を受けてキラキラと白く輝いている。 アシュの監視者としての己の使命を捨てたわけでは決してない。 けれど今までの自分とは決定的に違う自分がここにいる。 眩き冒険者、ボウケンシルバー。 己に与えられたもう一つの名を思いながら、映士は鏡にへばりついたり離れたり角度を変 えて眺めたりして、くるくると何度も確認するように己の姿を映しては夢中で鏡に見入っ ていた。 その時、ふいに映士の後ろで押し殺すような笑い声がして、映士がはっと振り返るといつ の間にかそこには明石が立っていた。 「明石・・・」 「そんなに心配しなくてもよく似合ってるぞ」 いつから見ていたのか、そして映士の行動に何を思ったのかそんな言葉を口にした明石に 映士は恥ずかしさのあまり一瞬で真っ赤になった。 しかしそこは負けず嫌いで意地っ張りな性分である。 誤魔化すように尊大に腕を組み、大きく鼻を鳴らして映士はそっぽを向いて明石から目を 背けた。 「当然だ。俺様は何を着ても似合うんだ。俺様だからな!」 映士のそんな言葉と態度に苦笑しながら、明石は映士へと近づいた。 そしてそっと映士の肩に手を置き、自分の方へと向かせる。 「明石?」 「本当に・・・よく似合ってる」 真正面に見据えた映士を爪先から頭まで見つめ、明石は目を細めて囁いた。 そのままごく自然な動作で映士の頬に手を添え顔を近づける。 映士は、唇が触れる寸前一瞬身を強張らせたがほとんど微動だにせず、立ち尽くしたまま 目を開いたまま、明石の突然の口づけを受け入れた。 長いとも短いともつかない時間が二人の間を流れて、やがてゆっくりと明石は顔を離した。 「意外、だな」 ぽつりと呟かれた戸惑うような明石の言葉に映士は眉間に皺を寄せる。 「・・・何がだ」 「拒まないのか?」 「・・・・・・」 映士はその問に答えず無言で目を伏せる。 「映士・・・」 明石は物言わぬ映士の身体に腕を回し、グッと力強く抱き寄せた。 長い髪に手を差し入れてやんわりと梳きながら、もう片方の手は背を這わせ腰へと回す。 それでも映士は全く抵抗を見せない。 しかしながら唐突に口を開いた。 「正直なところ・・・」 「ん?」 「お前には少なからず感謝している」 「・・・」 一瞬手を止めた明石だったが、映士の言葉に耳を傾けながら黙って手の動きを再開した。 映士の身体が小さく震える。 「・・・っ、俺様が、アシュになった時・・・、俺様はお前に、お前の仲間に、刃を向けた・・・っ」 明石の腕の中で体を好きに弄られて、時折声を詰まらせながらも映士は喋り続ける。 「あの時の、俺様に、理性なんて、なかった。それでも、お前は、俺を、信じてくれた。『ア シュの血と闘え』と、言ってくれた」 「映士」 「今、俺様が、こうしていられるのは、お前のおかげ、だ・・・あっ!」 言葉を紡ぐ間にとうとう明石の手がシャツの下に入り込んできて、素肌に直に触れられた 感触に映士は思わず声を上げ、明石のジャケットを握りしめた。 「こ、の服、サガスナイパー、ゴーゴーチェンジャー、ボウケンシルバーの全て・・・っ、 それに居場所も、仲間さえも・・・、全部お前がくれた」 「お前には十分のその資格がある。そう判断したからそうしただけだ。それに、選び取っ たのはお前自身の意志だろう?」 「そ、れでも・・・あ、嬉しかった・・・っ」 「映士・・・」 「嬉しかったんだ・・・明石・・・!」 「映士!」 真っ直ぐで真摯な映士の告白に明石はもう一度映士に口づけた。 そうしながら上半身に這わせていた手を下半身へと・・・触れさせようとしたその瞬間、 明石のジャケットを掴んでいた映士の手にさっきまでとは比較にならない強い力が込めら れた。 「だからってな・・・」 「は?」 映士の声のトーンもがらっと変わった。 切なげな声は一転して低く威嚇するものに変わり、その急激な変化に戸惑った明石は対処 が遅れてしまった。 「こんなことまで許した覚えはねぇっ!!」 「ぐぁ・・・っ!!」 怒鳴ると同時に振り上げられた映士の膝は見事明石の鳩尾にヒットした。 明石は腹を押さえ、身体をくの字に曲げてその場に崩れ落ちた。 映士はさっと身を翻して明石から距離をとると、乱れた衣服を整えて勝ち誇ったようにニ ヤリと笑った。 「これしきのことで俺様を捕まえたと思ったら大間違いだ」 「ああ・・・そのようだな」 明石もそれに答えるように体勢を立て直しながら笑みをつくる。 そんな明石に映士はもう一度満足そうに笑うと、明石に背を向け背中越しにヒラヒラと手 を振りながら立ち去っていった。 その背中を見つめながら明石は大きく息をつき、ふっと笑って呟いた。 「高丘映士。思った通り・・・なかなか楽しい冒険になりそうだ」 ミッションはまだ始まったばかりだった。 |
初冒険で初赤銀。
まぁありがちな感じで。(笑)
つかチーフ手ぇ早すぎ。(爆)